体調を維持する上で大切なのは、適切な栄養素を知り、タイミングよくそれをとること。特に女性の体は生理周期によって変化が大きく、そのリズムをきちんと把握すると、より快適な状態に体調を整えやすいという。体調維持に生理周期を取り込む方法を探った。
「豆乳は飲み続けて、それに食事指導も加えていきましょう」。千葉市に住む佐山利香さん(仮名、28)は8月、ウイメンズクリニック南青山(東京・港)の小杉好紀院長のカウンセリングを受けながら、悩みが薄らいでいくのを感じた。
5歳の子どもがいる佐山さんは3年前から「陣痛かと思うほど」ひどい生理痛に悩まされてきた。婦人科を受診したが痛み止めを処方されるばかり。自分なりに勉強して豆乳を試したところ、生理の3−4日前から飲むと痛みがぐっと軽くなると気づいた。「受けたストレスに比例して生理痛が強くなる」自覚もあり、ホルモンバランスが崩れたのでは、と考えて食事指導に熱心な小杉院長に連絡した。
一方「仕事や育児の悩みが生理痛などになって返ってくることは多い」と話すのは、三鷹レディースクリニック(東京都三鷹市)の天神尚子院長。オレンジページの「元気がでるからだの本」などで女性に知られる天神院長のもとには、ストレスが原因の不調を訴える女性も後を絶たず、食生活を見直すと症状が軽くなる人が多いという。
小杉院長はホルモンバランスが生理周期によって大きく変化するのに「基礎体温をつけている女性は少なく、体のことを知らない」と懸念する。女性の生理周期は生理後から排卵期までの低温期(卵胞期)と排卵後から生理までの高温期(黄体期)に分かれる(図参照)。低温期は卵胞ホルモンがたくさん分泌され、たいていは調子がいい。
問題は高温期や月経期だ。特に高温期は「イライラする」「気分が落ち込む」などの月経前症候群が多い。体のむくみや食欲の急激な増進も一般的な症状だ。
では、どのように食事と生理周期を結びつければいいのだろう。むくみ対策としては、利尿作用が期待できるキャベツなどアブラナ科の野菜をとるといい。ゴマはビタミンEやセサミンが豊富な抗酸化物質。天神院長はキャベツのゴマあえなどをすすめる。
高温期は食欲が増し、あめなど甘い物が無性に食べたくなる傾向がある。女子栄養大学栄養クリニックの管理栄養士、蒲池桂子さんによると、高温期は知らぬうちに普段より100−200キロカロリー多くカロリーをとっている女性が多い。
しかし甘い菓子は体の代謝を悪くするので「とるならミネラルが豊富な黒砂糖や食物繊維の多いキウイやイチジク、バナナを適量で」とすすめる。マグネシウムやカルシウムを豊富に含んだコップ1杯くらいの硬水や、にがりなども過剰な食欲を抑制するのに役立つ。
一方、ビタミンやミネラル類とゴマやショウガは時期を問わず常にとった方がいい。中でも葉酸(ようさん)。小杉院長は日本の成人女性は慢性的に葉酸が不足していると指摘する。葉酸は小松菜やホウレンソウ、レバーに多く含まれている。例えばゴマやラー油を使った「レバーの坦々いため」は葉酸を多く含むメニュー。食物だけでは補いにくいので、サプリメントの力を借りるのも一手だ。
女性の場合、冷えから血液の循環が悪くなり、ホルモンバランスが崩れて生理痛や生理不順、肩こりや腰痛などの不調につながることも多い。常にバランスを維持するよう心がけることが大切だ。
だがダイエットとなると、炭水化物を極端に減らしたり、油を断ったりしがち。炭水化物はホルモンを分泌する視床下部の働きと関係する。また油はホルモンの原料となる。中でもオリーブオイルやシソ油、亜麻仁油などの不飽和脂肪酸は良質な原料だ。
炭水化物や油分を適度にとらないと「老化を促す」(小杉院長)ことになりかねない。サラダを食べるときのドレッシングをサラダ油からシソ油に替えたり、おひたしにはすりゴマを添えたりして、体によい油や食材をうまく取り入れる。お茶の1杯をしょうが湯にするといったひと工夫でも効果が期待できるだろう。
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