7.むし歯の分類
新基準の初期むし歯段階7分類
「虫歯」削らずに治せる 初期段階の診断基準普及へ
白く濁っている部分(矢印)は初期虫歯の状態だ
(日本ヘルスケア歯科学会の杉山精一代表提供)(写真:産経新聞)
虫歯というと、削って治すイメージが一般的。だが、初期の虫歯なら口内環境を整えれば歯の再石灰化が進み、削らずに治すことが可能だ。日本の診断基準では、穴が開いてからが虫歯とされるが、海外では初期段階の虫歯を診断できる基準「ICDAS」(アイシーダス、International Caries Detection and Assessment System=国際的う蝕(しょく)探知評価システム)」の普及が進み、日本でも導入の動きが広がっている。(油原聡子)
これまで、虫歯は学校で検診の時に使う診断基準として、虫歯を指すCと数字を組み合わせて、
C0(虫歯になりそう)
C1(表面に穴が開いた)
C2(虫歯が中まで到達)
C3(虫歯が歯の神経まで到達)
C4(虫歯で歯が崩壊)
となっていました。
まず、歯をきれいに磨いたうえで、空気を吹き付けます。そして、歯の表面に異常がないか7段階で診断します。
コード0(健康な歯)
コード1(空気で乾燥させると表面が白濁する)
コード2(目で見て白濁している)
コード3(穴が開いている)
コード4(歯の内部にも虫歯の陰がある)
コード5(歯の奥まで穴が開いている)
コード6(コード5が更に拡大)
注目されるのはコード1とコード2です。
歯に穴が開く前の初期の虫歯を診断し、この時点で治療を開始します。実はこの段階だと、表面のエナメル質が修復される「再石灰化」によって健全な歯に戻すことができるのです。
(参考)
新基準=ICDAS。
新基準を導入している学会=「日本ヘルスケア歯科学会」。
2012年11月14日 提供:産経新聞
ICDASにおけるう蝕状態の分類
■健全歯面:コードO
う蝕(5秒間の乾燥後エナメル質の透明度に全くあるいは疑われる変化)のエビデンスが見られない。エナメル質石灰化不全,歯牙フッ素症, 歯の損傷(咬耗,磨耗,酸蝕)および外因性あるいは内因性の着色のような歯表面は健全として記録される。また,非う蝕習慣(例;頻繁なお茶の飲食)と一致していると思われる多数の小窩裂溝に見られる着色は健全と記録する。
■エナメル質の初期の可視的変化:コード1
コード1:小窩裂溝
湿潤状態の時,う蝕活動性に関わる色の変化のエビデンスがない,しかし乾燥(5秒間)後,健全エナメル質には見られないう蝕様白濁あるいは色の消失(白色あるいは褐色窩洞)が見られる。
あるいは, (湿潤および乾燥の状態で)小窩裂溝部の境界部に限ってう蝕による色の変化がある,これらのう蝕部位の状態は,コードOに見られるような着色小窩裂溝とは一致しない。
コード1:平滑歯面
湿潤状態の時には,う蝕活動性に関連する色の変化は見られない, しかし乾燥後,健全エナメル質には
見られないう蝕様白濁が見られる。これは頬舌面で見られる。
■エナメル質の明確な可視的変化:コード2
歯を湿潤状態で観察する。そうすると,健全エナメル質の様相とは異なる①う蝕様白濁(白斑), ② 自然の
溝・窩よりも広い褐色のう蝕様退色がある。(注意;脱灰は乾燥したときになお見られる)
■象牙質が見えないあるいは表層下に影の見られるう蝕による局所的エナメル質の崩壊:コード3
湿潤状態で明確なう蝕様白濁(白斑)および・あるいは褐色のう蝕様退色。約5秒間乾燥を行うと,溝・窩の入り口あるいはその中に歯の構造のう蝕様欠損がある。これは溝や窩の入り口あるいは中に脱灰(白濁〔白斑〕,褐色あるいは黒褐色壁)のエビデンスを示す。溝や窩は実質的にまた自然に正常像より幅広く見えるけれども,象牙質は脱灰部の壁あるいは底部に決して見えない。もし疑わしいあるいは視診評価を確定したいのなら, WHO/CPI/PSRプローベを使用して歯表面にソフトに触れてみて確かめるようにする。すなわち,先端の球先を溝や窩に沿わせてスライドさせ,先端の球がエナメル質脱灰部表面に侵入したら,表面の不連続性が検出される。
■局所的エナメル質の崩壊の有無にかかわらず表層下に黒色の影:コード4
この状態は,局所の崩壊(象牙質を示さない表面の連続性の消失)の兆候を示すあるいは示さない明らかなエナメル質表面を通して見える変色象牙質の影として現れる。この影は,歯が湿潤状態の時により簡単に見られる。暗色部は灰色, 青色あるいは褐色の内因性の影である。この影は評価される歯の表面に始まったう蝕を明らかに示している。もし診査者の意見として,う蝕窩洞が隣接歯面に開始し,表面上にう蝕のエビデンスがスコアされないのならば,その表面はコードOにすべきである。
■象牙質が見える明確な窩洞:コード5
白濁あるいは変色エナメル質の下に象牙質が見える窩洞。
湿潤状態で見るとエナメル質を通して象牙質の暗色が見える, 5秒間乾燥すると,溝や窩の入り口やその中に歯構造の喪失のエピデンスが見られる-明らかな窩洞。溝や窩の入り口やその中に脱灰のエピデンス(白濁〔白斑〕,褐色, 暗褐色の壁)が見え,診査者の判断の元になる象牙質が顕示される。
WHO/CPI/PSRプローべで象牙質内の明らかな窩洞の存在を確認することができる。これは構や窩に沿わせて先端の球をスライドすることによって確認でき,もし,球が進入し,診査者が象牙質内に窩洞の存在を確認すれば象牙質窩洞を確認できる(溝あるいは窩のエナメル質の厚さは0.5から1.Ommである)。注意:深部の歯髄に近い象牙質のプロービングは行わない。
■可視的象牙質の明確な広範囲の窩洞:コード6
明らかな歯の構造の消失,すなわち窩洞は深く、幅広で,象牙質が壁および底部に明確に可視できる。広範囲の窩洞は少なくとも歯表面の半分を占めるか,あるいは歯髄まで到達している。
2013年1月25日 提供:日本歯科医師会雑誌Vol.60No.6
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