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記事本文の続き 静岡県が検査対象に含まれたのは、日本の検査で同県産茶葉から基準を超える放射性物質が出たことに加え、パリ郊外の空港で同県産の緑茶から基準値を上回る放射性セシウムが検出されたため。
今後は静岡県産の食品をEUに輸出する場合、放射性物質の検査証明書の提出が求められる。
新潟、山形両県産の食品については、これまで550のサンプル検査を実施した結果、安全基準を満たしていることが確認されたとしている。(共同)
放射性物質の発がんリスクは?2011/07/04 13:53更新 |
【どうする?食の安全】(下)
福島第1原子力発電所事故を受け、横浜市は学校給食に使う食材の放射性物質(放射能)の測定を16日から開始した。同市では給食の食材に福島県産や茨城県産など被災地の野菜や肉を使っており、保護者からの「放射性物質の検査をしてほしい」との要望に応えたものだ。
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記事本文の続き 検査は、翌日の給食で使う食材から1品選んで行う。外部の検査機関に依頼し、1検体当たり2万5千円かかる検査費用は市からの補助金で賄う。市教育委員会では「食材は出荷地で検査されており、安全は確認されている。ただ、不安という保護者もおり、安心してもらうために検査を行うことにした」と説明する。
◆検査は必要だが…
検査を求める声は、食品メーカーやスーパーなどにも寄せられている。検疫所の元食品衛生監視員、伊藤澄夫さんは「安全かどうかを知るためにいろいろな食品の検査をすることは必要だろうが、一度検査をしたものを二度、三度と検査してもより安全性が高まるというものではないと思う」と指摘する。
BSE(牛海綿状脳症)や残留農薬などが問題になったときも検査を強化する声が上がった。BSEでは、世界的には「科学的に不要」とされる、牛の月齢に関係なく行う全頭検査が国内では今も継続されている。
ある流通企業の食品担当者によると、全国的に野菜の売り上げが落ち込んでおり、特に被災地では地元産の野菜が売れない状況が続いているという。中国産や関西以南の野菜の売り上げはそれほど落ち込んでいないといい、担当者は「放射性物質に汚染されている可能性のある食品はなるべく避けたいのでしょう」とみている。
◆生活習慣にもリスク
放射性物質には発がんリスクがあることが確認されている。その意味では食事から取り込む量はなるべく少ない方がいいのは確かだ。しかし、国立がん研究センターの津金昌一郎・予防研究部長は「発がんリスクは喫煙や飲酒、運動不足、肥満、塩分の過剰摂取、野菜不足などの生活習慣にもある。総合的に考えることが大事」と指摘する。
食品の放射性物質の暫定基準(規制)値は、食品から取り込む放射性物質を年間5ミリシーベルト以下にすることを目指して決められたものだ。放射性セシウムは「飲料水」「牛乳・乳製品」「野菜類」「穀類」「肉・卵・魚・その他」の5カテゴリーの合計で5ミリシーベルト。1カテゴリーで1ミリシーベルトを想定している。
とはいえ、たとえ基準値内でもいろいろな食品に放射性物質が少しずつ入っていれば、基準値以上の放射性物質を取り込むことになり、将来、がんになるリスクを高めることになるのではないか。
長崎大学の長瀧重信名誉教授(放射線影響学)は「放射性物質が心配で野菜を食べないとすれば、野菜不足によって発がんリスクが高まることになり、本末転倒。一度取り込んだ放射性物質がずっと体の中にたまっていくと思っている人は多いが、セシウムは3カ月で体外に排出される。少し基準値を超えたとしても健康に影響が出る値ではない」と説明。津金部長も「100〜200ミリシーベルトの被曝(ひばく)は、野菜不足や受動喫煙と同等の発がんリスクがあることが分かっているが、100ミリシーベルト以下の影響はよく分かっていない。国民全体の発がんリスクを下げるには、禁煙を進めた方が効果は大きいと思う」と話している。 (平沢裕子が担当しました)
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■国際がん研究機関(IARC)の発がん性評価でグループ1(ヒトに対して発がん性がある)に分類されるもの