最大87ミリシーベルトの甲状腺被ばく 
弘前大、福島の65人調査

 

 弘前大被ばく医療総合研究所(青森県弘前市)の床次真司(とこなみ・しんじ)教授のグループが、福島県の65人を対象に、東京電力福島第1原発事故で放出された放射性ヨウ素による住民被ばく状況を調査した結果、甲状腺に最大87ミリシーベルトの被ばくをした人がいることが、9日分かった。

 一方で、24人が10ミリシーベルト以下だったことも判明。地域によって放射性ヨウ素の濃度が異なり、避難経路などによって被ばく量に差が出たと考えられるという。

 放射性ヨウ素の半減期は8日で、セシウム137の約30年などと比べて短いため、時間がたつにつれ被ばく状況を把握するのは難しくなる。床次教授は「国が住民の甲状腺を長期的にチェックし、手厚くサポートすることが重要」としており、調査結果を今後、内閣府に提供するという。

 調査は昨年4月11〜16日、福島県浜通り地区から福島市に避難した48人と、原発から30キロ圏周辺の浪江町津島地区にとどまっていた17人を対象に、甲状腺内の放射性ヨウ素濃度を調べ、逆算して原発事故翌日の3月12日時点の放射性ヨウ素の被ばく量を算出。

 その結果、50人からヨウ素を検出し、15人は不検出だった。国際原子力機関が甲状腺被ばくを防ぐため安定ヨウ素剤を飲む目安としている50ミリシーベルトを超えたのは5人。

 このうち数値が最も高かった人は浪江町に残った成人で87ミリシーベルト。次いで浪江町に2週間滞在後、福島市へ避難した成人が77ミリシーベルトで、15歳以下の子どもの最高値は47ミリシーベルトだった。

 甲状腺被ばくは局所的で、全身被ばくとは異なる。床次教授は「リスクがないとは言い切れないが、チェルノブイリ原発事故などと比べて低い数値だ」としている。
 

2012年3月12日 提供:共同通信社