「関西地方は原発ゼロでも真夏に電力不足は起こらない」。


 福井県、大飯原発の再稼働問題。原発の即時全廃を訴える広瀬隆氏は、関西電力が出した今夏の電力需給の見積もりについて、疑問を呈する。緊急寄稿・広瀬隆「関西地方は原発ゼロでも真夏に電力不足は起こらない」+特集「『原発ゼロ』より先へ!」も同時収録。[掲載]週刊朝日(2012年4月27日号

◇「原発ゼロ」より先へ!
◇「関西地方は原発ゼロでも電力不足起こらない。みんな安心して!!」 広瀬隆
◇大飯原発再稼働派もあきれる、官邸「野蛮で稚拙な新5人組」
◇めげない原子炉メーカー、廃炉技術開発で「焼け太り」?
◇東電退職者が中韓に買われる? 「年俸5千万」の札束攻勢
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◇史上最悪の貿易赤字に転落、政権の「無策」で国力が蝕まれる

「原発ゼロ」より先へ!

 ミサイル騒ぎも吹き飛ぶほどだった。野田政権が「安全宣言」を発してしまった。枝野幸男経済産業相らが4月14日、福井県を訪れ、関西電力大飯原発3、4号機(同県おおい町)の再稼働へと猛進したのだ。だが国民不在の茶番劇はもういい加減にして、「原発ゼロ」の先にある未来を真剣に考えるべきではないか。

「関西地方は原発ゼロでも電力不足起こらない。みんな安心して!!」

緊急寄稿・広瀬隆

 昨年、私は週刊朝日の連載誌上で、日本の電力会社すべて、原発ゼロでも電力不足にならないことを実証したが、おかしなことに、今年に入ってから、福井県の大飯原発を再稼働させようと目論む関西電力(関電)が、「2012年夏に2010年並みの猛暑であれば、原発ゼロの場合に25%の電力不足が起こる」と主張して、これをいい加減な経済関連記者が引用して、電力不足を煽(あお)り立ててきた。
そのため、関西地方の企業は、「電力不足では節電に追いまくられて、企業が成り立たない。国外脱出も難しい。原発は危険で信用ならないが、背に腹は代えられない。原発を少し動かしてもらおうか」といった間違った方向に誘導されてきた。また一般消費者でも、似たような気分に追いこまれる人さえいる。しかしこの数字は、関電が流してきたデマである。原発資産を守りたいがために、関電は無理やり夏の電力不足予測を作り出している。その嘘(うそ)にだまされてはいけない。
そもそも25%の電力不足というデマを飛ばしてきた関電の化けの皮がはがれて、3月12日に関電が出した「第2回大阪府市エネルギー戦略会議ご説明資料」では13・9%不足に激減した。このように数字が減るのを見るだけで関電が詐欺師であることは明確だ。この計算には、真夏の最大電力需要の想定にその詐欺の手口が潜んでいた。昨年夏に関電が想定した最大電力需要は、3037万キロワット(kW)であった。しかしこの数字は、関西でも気温が42度を超えるというトテツモナイ嘘を元にはじき出された数字であって、実際に、関電管内での2011年夏の最大電力需要は、大阪市で35・6度となった8月9日の2784万kWでしかなかった。3037―2784=253万kWも過大に電力需要を見積もって、消費者に脅しをかけてきたのだ。関電が再稼働しようとしている大飯原発3・4号機は、118万kW×2基=236万kWなのだから、どれほど悪質な最大電力需要の想定をしてきたかが分る。
そして今年の25%電力不足というデマは、昨年よりひどい大嘘の最大電力需要3138万kWという、あり得ない想定をして、電力不足を煽った結果であった。なぜなら・・・


2012年4月27日号 提供:週刊朝日