発覚遅れる女性の心筋梗塞…病院到着に2時間差
心筋梗塞になった患者のうち、女性は男性よりも、専門病院までの到着時間が2時間近く遅いことが、国立循環器病研究センター(大阪府吹田市)など全国27施設による共同調査でわかった。
女性では典型的な症状の胸痛が表れにくく、危機的な状態だと気づかないケースが多いためという。
調査は2008〜09年に、発症から3日以内に入院した1826人(男性1366人、女性460人)を対象に実施。発症から来院までの時間は、男性が平均7・5時間だったのに対し、女性は同9・4時間だった。女性患者の発症年齢が男性より平均で10歳高く、女性の死亡率(13%)は男性(6・4%)の2倍以上になっていることも判明した。
女性の来院が遅れる理由について、調査を主導した同センター心臓血管内科部門の横山広行特任部長は「女性はホルモンバランスの違いなどで、胸痛が表れにくいかもしれない」と分析。男性に比べて罹患(りかん)者が少なく、「心筋梗塞は男性の病気」との誤解から、胸痛を感じていても専門病院ではなく、最初は身近な診療所を受診する患者もいるという。
治療による救命率は発症から時間がたつほど下がる。患部の血管を内側からステント(金属製の筒)で広げる治療の効果は、発症から2時間以内が最も高く、その後は次第に落ちる。横山特任部長は「治療の開始は一刻を争う。疑わしい症状があれば、すぐに医療機関を受診するか、電話で相談してほしい」と訴える。
最終更新:10月23日(日)17時45分
女性は予後が悪い、心筋梗塞
獨協医科大学 心臓・血管内科講師 菊地研
なんだか穏やかではありませんね。「予後が悪い」って。
「悪い」という言葉だから、なんだか良くないことだって想像できますね。そうなのです。女性は心筋梗塞になると治り難かったり、重症になりやすいのです。
もともと女性は男性に比べて心筋梗塞になりにくいのです。ですが、心筋梗塞になると重症になりやすいのです。あまり重症だと死亡ってことにもなります。女性の場合、男性に比べて重症になる確率が3倍高いとも言われています。
女性の場合、発症してから病院を受診するまで時間がかかっているとの報告があります。そのことも原因で治療が遅れてしまうのです。
どうしてでしょう?
1つ目の理由として、女性の場合、症状が典型的でないということもあります。胸全体が苦しい、圧迫される、締め付けられるという典型的な症状でないことがあります。「下顎が苦しい」「どうも体調が悪い。冷や汗をかくけれど、どこも痛いところはない」という症状もあります。糖尿病を合併していると、全く症状がないということもあります。
2つ目の理由として、女性は我慢強いということもあります。男性に比べて我慢強いのです。あまり症状が強くないと我慢してしまうみたいです。「心臓発作も経験したけど、お産のときの方が辛かった」と退院する時におっしゃった患者さんもいます。さらに、夜間に具合が悪くなっても朝まで待ってから病院へ行こうと考えるみたいです。高学歴の方ほどそういう傾向があるみたいです。「だって、『救急車をタクシー代わりに使った』って言われたら嫌ですもの」と躊躇うみたいです。
そういう理由で病院を受診するのが遅くなるわけです。だから、治療が開始されるまでに随分と時間がかかっているわけです。
これをお読みになっている女性の皆さんにはこの重要性を分かっていただきたいのです。
「胸が苦しい」と自覚してから直ちに病院を受診してもらいたいのです。早ければ早いほど良いのです。強いて言うと、1時間以内に受診してほしいのです。救急車を呼んで病院へ搬送してもらいましょう。万が一、病院へ搬送される途中に心臓が止まっても救急救命士が救ってくれます。病院に到着すれば、心臓内科医がすぐに適切な処置を行い、緊急でのカテーテル治療をしてくれます。そうすると、無事に退院できる確率がグンと95%にまで高くなるのです。
早く病院を受診すれば、早く治療が受けられて無事に退院できて元通りの生活に戻れるわけです。
くれぐれも女性の方は、お気をつけください。
。「心筋梗塞」とか「狭心症」って、よく耳にする病名ですが、一体どんな病気なんでしょうか?実は最近話題になっている「生活習慣病」とも深いかかわりがあるのです。
今回は心筋梗塞についてごく簡単にご説明します。
<CONTENTS>
■ 心筋梗塞ってなに?…心臓を栄養する血管が詰まってしまう病気
■ 心筋梗塞と狭心症はなにが違うの?…持続する時間の違い
■ 胸痛があったら全部心筋梗塞?…もちろんその他の病気もあります
■ 心筋梗塞の原因は?…喫煙、肥満などでリスクがあがります
心筋梗塞ってなに?
心臓を栄養する血管が詰まってしまう病気
心臓を栄養する血管が詰まってしまう病気
人の体のなかにはちょうど中央より少し左の胸の部分に心臓があります。
心臓は皆さんご存知の通り、体全体に血液を送り出すポンプの役割をしています。これは心臓の筋肉が全体としてうまく収縮することで行われています。
ところが…
心臓ももちろんポンプとして動くために、酸素や栄養分を血液から取り入れないといけません。心臓に栄養や酸素を補給する役割を担っているのが「冠状動脈」という血管で、心臓のまわりをとりまいています。(ちなみに「冠のように取り巻いているから=冠状動脈」です。単純です。右上の図では、心臓の表面にへばりついているように見える血管を指します。)
この血管が詰まってしまって(=梗塞)心臓の筋肉(=心筋)が一部死んでしまうことを心筋梗塞といいます。前胸部に非常に強い痛みや締め付けられる感じ、圧迫感がおこります。冷や汗がでたり呼吸が苦しくなったりすることもあります。
余談ですが肺の血管が詰まれば「肺梗塞」、脳の血管が詰まれば「脳梗塞」といいます。
心筋梗塞と狭心症はなにが違うの?
持続する時間の違い
血管は水道のホースと同じ
右の図をご覧ください。
人の血管はちょうど水道のホースみたいなものだとお考えください。
年をとるにつれこのホースは弾力がなくなり硬くなります(=動脈硬化)。血管壁にはべっとりとしたコレステロールがくっついてきてだんだん内腔が狭くなります。ちょうど、水道管の詰まりを想像していただければ良いと思います。
心臓に栄養を供給する血管が狭くなり、血液が通りづらくなると心臓は栄養・酸素不足になります。そして、例えば「階段を上る」、「小走りになる」など、少し心臓に負担がかかる動作をすると、胸がしめつけられる感じや、息ぎれがおこります。これが「狭心症」です。ただし、完全に詰まっているわけではないので症状は15分以内になくなります。
ところが、完全に詰まってしまうと、その部分の心臓の筋肉(心筋)が死んでしまいます。症状も15分以上続きます。この状態が「心筋梗塞」です。
胸痛があったら全部心筋梗塞?
もちろんその他の病気もあります
心筋梗塞の典型的なイメージとしては「冷や汗、呼吸困難を伴うような胸〜腹部または左肩に放散する激烈な痛み」という感じですが、ご高齢の方や糖尿病の方ではあまり痛みを感じないこともあります。
あとは、「胸全体が圧迫される感じ」「ぎゅーっとしめつけられるような感じ」「焼け付くような感じ」といった言われ方をすることが多いようです。
逆に15分以下の「ちくちく」「きりきり」するような場所が特定できるような痛みは心臓からくるものではない可能性が高いと思います。
心筋梗塞の原因は?
喫煙、肥満などでリスクがあがります
危険因子の数と心臓病の発生リスク〜危険因子が増えると心臓病のリスクは30倍にも!
心筋梗塞が起こる原因は、もともと血管の内腔が狭くなっているところに、血の塊(血栓)が詰まってしまって完全に閉塞するからだといわれています。
それではどうして血栓ができるのでしょうか?
どうも血管の内壁に微小な傷ができて、これを修復しようとして血栓ができるという説が有力です。発症する直前に過度のストレスや激務、睡眠不足がかさなっていることも多々見受けられるようです。
さらに、生活習慣病とのかかわりも最近では話題になっています。
「メタボリックシンドローム」ってご存知ですか?
別名「死の四重奏」ともいい、肥満がある上に高脂血症、高血圧、糖尿病の3つのうち2つ以上があると、なんと心臓病のリスクは30倍にも上るというものです(右上の図をご覧ください)。今、日本では推定患者数 約1千万人といわれています。その他、喫煙やストレスも心筋梗塞のリスクを上げるといわれています。
メタボリックシンドロームについて詳しくはメタボリックシンドロームって何?へどうぞ。
ちなみに男性のほうが女性よりも心筋梗塞になる確率が高いのですが、女性も年齢を経るにしたがって率があがります。
もし心筋梗塞になってしまったら、もちろん、とにかく早く病院に行くことです。その場合、救命処置が行われますが、同時にどうやって血栓を溶かすかが検討されます。発症して時間が短ければ(通常6時間)、ある程度効果があるといわれています。お薬で血栓を溶かしたり(血栓溶解療法)、脚の付け根の血管から風船(バルーン)を入れて閉塞した血管を広げる方法(PTCA)が行われます。
普段の生活習慣+過労やストレスが引き金になりますので、気をつけてくださいね。