皮膚がん促す因子特定 慢性炎症タンパク、ガン転移も
 

 熊本大大学院の尾池雄一(おいけ・ゆういち)教授(分子遺伝学)が、慢性炎症の原因となるタンパク質「Angptl2」が皮膚がんの発症リスクを高め、転移も促すことを解明し、10月31日付の米がん学会誌電子版で発表したことが18日、分かった。

 尾池教授は、加齢や日光に当たることで皮膚組織にこのタンパク質が増えることを発見。人為的に同タンパク質を増加させたマウスで実験したところ、皮膚がん発症も増えることが分かり、逆に欠損させたマウスでは発症も抑えられたという。

 また、このタンパク質はがん細胞からも分泌され、血管やリンパ管を新生してがん細胞が増殖しやすい環境をつくるとともに、がん細胞自体に働きかけて動きを活発にすることで転移を促すことも判明した。

 尾池教授はこれまで、がんや糖尿病、動脈硬化など多様な病気のもととなる慢性炎症のメカニズムを研究し、既に同タンパク質が脂肪細胞で引き起こす慢性炎症が、メタボリック症候群の原因となることを解明していた。

 尾池教授は「Angptl2の生成や働きを抑えられれば、がんだけでなく、生活習慣病や動脈硬化などの治療にもつながる」と話している。

2011年11月21日 提供:共同通信社