スプラウトやさい

体の解毒作用を活性化
「ブロッコリーの芽」が、がんを防ぐ効果があるらしいとして、米国で脚光を浴びている。日本の研究者らもお墨付きを与えているという。どう食べたらいいのか。

スーパーの野菜売り場でスプラウト野菜を見たことはないだろうか。スプラウトというのは発芽して3日ほどの若い芽のこと。一見するとカイワレ大根のようだが、それより細め。

ブロッコリー、マスタード、レッドキャベツといった種類がある。中でも注目はブロッコリーの芽だ。

米国では1997年に、ブロッコリーの芽(ブロッコリースプラウト)ががんを協力に防ぐと発表され、一躍脚光を浴びた。今や米国では、サンドイッチやピザの具の定番となるほど普及しているという。

そもそも成熟したブロッコリーは、米国の国立がん研究所ががんを防ぐ効果の高い野菜と指摘しているものの1つ。ブロッコリーに含まれるスルフォラファンという辛み成分が、肝臓の解毒作用を高め、食事などに紛れ込んだ発がん物質を壊すことで、がんの発症率を下げる働きがあるといわれる。

その発がん抑制作用が成熟したブロッコリーより20倍以上強いとみられるのが、ブロッコリーの芽だ。

「ブロッコリーの芽を週に25グラム食べれば、がんになる危険度を半分に減らせる。同様の効果を成熟したブロッコリーで得るには、毎週500グラムは食べなくてはならない」。ブロッコリー研究の第一人者である米ジョンズ・ホプキンス医科大学のポール・タラレー特別教授はこう話す。

「スルフォラファンががんを直接攻撃するのではなく、体に備わっている解毒メカニズムを強めるところが、ブロッコリーの芽の特徴」と、がん予防食品を研究する名古屋大学農学部の大沢俊彦教授は解説する。

この間接作用のメリットは、ビタミンCのようにそれ自体が効果を発揮する成分と比較するとわかりやすい。ビタミンCは体内の活性酸素を直接攻撃して壊す。私たちがビタミンCを摂取すると、体内のビタミンC量は一気に増えるが、数時間のうちに消費されて減っていく。そのため、効果の持続時間が短く、効き目を保つには1日何回も摂取する必要がある。

これに対して、ブロッコリーの芽は体に備わった解毒作用を活性化するので、食べてしばらくたっても効果が長引く。「ブロッコリーの芽を食べてから3日以上、解毒作用の強い状態が続く。効き目を保つには週に2、3回、合計で25グラム食べるといい」(タラレー特別教授)

生で食べると、シャキッとした食感の中にピリリとしたほのかな辛みがある。これがスルフォラファンの味だ。カイワレ大根より味も辛みもマイルドで、クセがない。サラダにしてドレッシングやポン酢をかけて食べるほか、刺し身のツマや豆腐やそばの薬味としても使える。値段は25グラムパックで100円程度と手頃だ。

国内でも昨年あたりから全国で販売が始まったが、普及は今ひとつのようだ。味に特徴がなく、利用法もわからないためだろう。日本人好みの食べ方を確立する必要がありそうだ。

「スルフォラファンは熱に強いので、加熱しても大丈夫。卵と相性がいいので卵焼きに入れるのがおすすめです。みそ汁やスープ、なべ物にも合います」

フードコンサルタントのサカイ優子さんは、おいしく食べるコツをこう話す。なべ物やスープにすると、有効成分が汁に溶け出すので、汁は最後まで飲むといい。

冷蔵庫に入れれば、1−2週間程度保存できる。ただし、包丁を入れたらできるだけ早く食べたい。長時間水にされすと成分が溶け出してしまうので、水洗いはさっと洗う程度にとどめたい。

(『日経ヘルス』編集部)2002.2.23

(2001.2.23 日本経済新聞)