九州大の津田誠(つだ・まこと)准教授(神経薬理学)らの研究チームは、がんや糖尿病で神経が損傷し、慢性的な激しい痛みに襲われる「神経障害性疼痛(とうつう)」を引き起こす原因物質が「IRF8」というタンパク質であることを突き止めたと、5日付の米科学誌セル・リポーツ電子版に発表した。
津田准教授によると、神経障害性疼痛の患者は世界で約2千万人いる。服を着るなど肌に軽く触れただけでも激しい痛みを感じ、モルヒネなどの鎮痛薬も効果が薄く、有効な治療法がないのが現状という。
これまでの研究では、神経が損傷すると、脳や脊髄にある免疫細胞「ミクログリア」が過度に活性化し、神経を興奮させる物質を作り出して痛みを引き起こすことは判明していた。ただ、ミクログリアが活性化するメカニズムは解明されていなかった。
津田准教授らは、ミクログリアを活性化させる"スイッチ"として、同細胞だけに存在するIRF8に着目。神経が損傷するとミクログリアの核内でIRF8が増加し、活性化状態になることを、マウスを使った実験で実証したという。
津田准教授は「IRF8の働きを抑えることで、慢性痛を緩和できる可能性がある」と指摘。既存薬を用いたIRF8の抑制などの研究を進めたいとしている。