がん幹細胞の証拠次々 少数が生き残り増殖 
皮膚や脳、腸で確認

 

 がん細胞を生み出すもとと考えられている「がん幹細胞」の存在を裏付ける複数の研究成果が2日付の英科学誌ネイチャーなどに掲載された。

 がんは従来、遺伝子に異常が生じて正常な細胞から変化したがん細胞が増殖すると考えられていた。だが近年、さまざまな組織に分化したり自己複製したりする能力を持つ幹細胞のようながんの幹細胞が少数存在し、これがもとになってがん細胞を生み出しているとの説が注目を集めている。

 がん幹細胞は放射線や抗がん剤が効きにくいと考えられている。既に白血病などで発見が報告されているが、今回の成果は広く存在を示す新たな証拠と言える。将来、がん幹細胞を標的にした効果的な治療法の開発につながる可能性がある。

 ベルギーなどの研究チームはマウスの皮膚がんが増殖する様子を観察。がん細胞の大半は増殖能力が低かったが、ごく一部は長く生き残り、そこから増殖した細胞が腫瘍の大半を占めるようになった。このごく一部の細胞は1日に2回の早い周期で分裂していた。

 米国のチームは脳腫瘍のマウスで実験した。抗がん剤で増殖を一時的に止めてもがん細胞は再び増殖。一部のがん細胞が幹細胞のような性質を持ち、がん細胞をつくっていた。オランダのチームも、マウスの腸の腫瘍で増殖に関係するのは5〜10%のがん細胞だと分かったとの成果を米科学誌サイエンスに発表した。

2012年8月2日 提供:共同通信社