ノロウイルス流行の兆し 06年以来、
12月にもピーク 厚労省が注意喚起

 

 ノロウイルスによるとみられる感染性胃腸炎が流行の兆しをみせている。過去10年で最も流行した2006年に次ぐペースで患者が増加。特に関西と九州で多い傾向にある。例年は12月中にピークとなることから、厚生労働省は27日、感染防止策をまとめ都道府県などへ注意喚起した。

 ノロウイルスは冬に多発する食中毒の原因として知られる。国立感染症研究所によると、全国約3千の小児科定点医療機関から報告された平均患者数は、最新データの12〜18日分で11・39人だった。12月を前に昨年の最高値の12・76人に迫る勢いで、02年以降の同時期では06年の16・42人に次いで多い。

 都道府県別では宮崎(22・42人)、福岡(20・03人)、大分(19・42人)など九州で多く、大阪(19・21人)や兵庫(18・36人)でも高い水準だ。

 ノロウイルスに感染すると、24〜48時間の潜伏期間の後、嘔吐(おうと)や下痢を繰り返す。多いと1日10回以上になる。通常は1、2日で落ち着くが、子どもや高齢者を中心に脱水症状が心配され、持病の悪化につながることもある。

 ウイルスを含む生がきを食べるなどしても感染する。冬場は乾燥した便や嘔吐物が舞い上がって口に入ることも多い。感染しても症状の出ない人がおり、気付かないうちにウイルスをばらまいてしまうことがあるので注意が必要だ。

 感染研の安井良則(やすい・よしのり)主任研究官は「流行を拡大させないために、自覚症状のない人も含めて、外出やトイレの後などには手洗いをしっかりとしてほしい」と話している。

※ノロウイルス
 感染性胃腸炎の代表的な原因ウイルス。人の腸に感染して便などとともに大量に排出される。感染力が強く、10〜100個の粒子が人体に入るだけで感染する。特定のタイプの感染で獲得した免疫が役に立たず、短期間で別のタイプにくり返し感染することもある。吐き気や嘔吐(おうと)、下痢、腹痛、微熱が主症状で、通常は1、2日で回復する。体力が低下している高齢者では重症化することもあり、2004年末から05年1月にかけて広島県福山市の特別養護老人ホームで7人が死亡した。


2012年11月28日 提供:共同通信社