厚生労働省は30日、中国で2009年ごろから発生が報告されていたダニが媒介するウイルス感染症で、昨年秋に山口県の成人女性1人が死亡したと発表した。この病気は「重症熱性血小板減少症候群」(SFTS)で、国内での確認は初めて。
厚労省は30日、各都道府県に対し類似の患者を診察した際の情報提供を要請した。
国立感染症研究所によると、患者には発熱や嘔吐(おうと)、血小板の減少などがあり、発症後約1週間で亡くなった。最近の海外渡航歴はなく、明確なダニのかみ痕も確認されなかったが、血液からこのウイルスの遺伝子が見つかった。遺伝子配列の一部が中国のものと異なっていたことから、日本にもこのウイルスはもともといたとみられる。
このウイルスはダニにかまれることのほか、患者の血液や体液との接触で感染した例もある。今回の患者の症状のほかに、食欲低下や頭痛などが現れることも知られている。感染研によると、有効なワクチンや治療法は現在のところなく、中国では数百例の感染報告がある。推定される致死率は12%程度。
厚労省によると、中国のウイルスはマダニの仲間から見つかる。マダニは血を吸う前の体長が3〜4ミリと、屋内にいるイエダニより大型で、国内では青森以南の山野に広く分布している。感染を防ぐにはこうした場所に入る際に長袖の服などを着て、ダニにかまれないことが重要という。かまれた場合は病院で受診するよう呼び掛けている。
※重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
2011年に初めて特定された新種のSFTSウイルスを保有しているマダニにかまれることなどで感染して引き起こされる病気。主な症状は発熱や吐き気、下痢などで、血液中の血小板や白血球の減少が特徴。重症化して死亡する例もある。09年ごろから 中国で患者が見つかり、中国での致死率は12%という。米国でも似た症例の報告がある。有効なワクチンはなく、対症療法が主な治療となる。