蚊にさされて発症する病気は多いので、これからの近所の水たまりなどへの駆除しなくては。
海外で蚊に刺されることによって発症する「チクングニア熱」の感染例が、県内でも報告されている。3月上旬には川崎市内で初めて確認。感染症法に基づく報告対象疾病となった2011年2月以降、県内では横浜と藤沢ですでに報告例があり、今回が5件目となる。死に至るようなケースは少ないが、関節の痛みが長期化することもあり、専門家が注意を呼び掛けている。
チクングニア熱は、デング熱やマラリア同様、蚊が媒介するウイルスによって引き起こされる。主に東南アジアや南アジア、アフリカに渡航した人が現地で感染し、帰国後に発症するケースが多い。
潜伏期間は3〜7日程度。インフルエンザに似た症状が特徴で、突然の高熱や頭痛、強い全身の関節痛を伴う。まれに重篤化すると脳炎や肝炎を併発する可能性もあるという。
全国で毎年10人前後の報告があり、4類感染症にも指定されている。川崎市中原区の関東労災病院では3月、20代の女性の感染が検査の結果判明。女性は2月半ば、インドネシアのバリ島を旅行していた。
県衛生研究所によると、11年に横浜市で2件、12年に横浜と藤沢の両市で1件ずつの報告があるという。
チクングニア熱の厄介な点は、媒介するネッタイシマカやヒトスジシマカが都市部に生息すること。感染症を専門とする同病院の岡秀昭医師は「マラリアはジャングルや山奥に行かないと感染しないが、チクングニア熱は都市部の通常の観光だけで感染の恐れがある」とする。さらに、ヒトスジシマカは国内にも広く生息。ウイルスの輸入例が夏場にあれば、その地域で感染が拡大する可能性もある。過去にはイタリアやフランスで流行例があった。
「インフルエンザと区別が難しい上、病名そのものの知名度も低い。一般の医療機関では分からないこともある」と岡医師。「報告例は氷山の一角。インフルエンザと誤解したまま自然治癒した事例はあると思われる」と指摘する。
有効なワクチンはなく、予防策としては刺されないための自己防衛が基本。虫よけスプレーの使用や肌の露出を避けるなどの対策が挙げられる。万一、感染の疑われる症状が出た場合について、岡医師は「特に海外への渡航歴がある際は、専門の医療機関を受診してほしい」と促している。