致死量のインフルエンザウイルスに感染したマウスに、炎症を抑える治療薬の候補物質を感染6日後に投与しても症状が改善したとする研究成果を、米メリーランド大などの研究チームがまとめ、1日付の英科学誌ネイチャー電子版に発表した。インフルエンザの新薬開発につながる可能性があるという。
化合物は製薬大手エーザイが細菌感染で起きる重症の敗血症治療のために開発し、臨床試験を進めている「エリトラン」という薬剤。細菌から出る毒素が細胞表面にある「TLR4」という免疫に関わる受容体に結合するのを阻害することで炎症を抑える。
チームは致死量のインフルエンザウイルスに感染させたマウス10〜15匹のグループで実験。エリトランを投与しなかったグループでは感染の14日後に10%しか生き残らなかったが、感染から2日後に投与したグループは90%、4日後の投与では53%、6日後では33%がそれぞれ生き残った。投与が早いほど、体毛の乱れや浅い呼吸などの症状が軽くて済んだ。
チームは、ウイルスによって引き起こされた免疫の過剰反応などをエリトランが抑えたとみている。
インフルエンザの治療薬にはタミフルやリレンザなどウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬があるが、発症から2〜3日の早期に投与する必要がある。これらの治療薬に耐性を持つウイルスもあり、新しい仕組みで働く新薬が待たれている。
2013年5月2日 提供:共同通信社