食中毒の脳症に治療法 ステロイド投与が有効
  

 腸管出血性大腸菌による食中毒で、けいれんや昏睡(こんすい)に陥って死ぬこともある脳症を起こした重症患者には、大量のステロイドを短期間に注射する治療が有効なことを東京大や富山大などのチームが突き止め、17日付の米科学誌ニューロロジー電子版に発表した。

 2011年にユッケなどを食べた5人が死亡した焼き肉チェーン店「焼肉酒家(やきにくざかや)えびす」の大腸菌O111による集団食中毒の治療記録を解析して判明した。チームの水口雅(みずぐち・まさし)・東京大教授は「食中毒による脳症には有効な治療法が乏しかった。新たな治療法になる可能性がある」としている。

 チームは富山、石川、福井各県などの患者86人を対象に解析。40%に当たる34人が腎不全を伴う溶血性尿毒症症候群へと重症化し、そのうち死亡した5人を含む21人(24%)が脳症を起こしていた。

 当初は血漿(けっしょう)交換などの治療をしていたが、ステロイドの投与を始めると死亡例はなくなり、この治療を受けた脳症患者12人のうち11人は後遺症もなく回復した。インフルエンザウイルスによる脳症でステロイドが使われていることを参考にしたという。

 O111が原因の食中毒で脳症に至るのは通常は数%とされる。チームは、集団食中毒を起こしたO111は重症化しやすく病状の進行が早いタイプだったとみている。

2014年1月20日 提供:共同通信社