黒豆を使ったお茶「黒豆茶」が人気になっている。市販の黒豆茶を買って飲むのもいいが、自分で作るのも簡単だ。黒豆を煎(い)って、お湯を注ぐだけ。香ばしくてクセの少ない味を楽しめる。しかも、いろいろな健康効果を期待できることがわかってきた。 |
東京都の主婦Aさん(40)の悩みは、手や足の指先が冷たくなる冷え性。ところが、黒豆茶を飲んだところ、「飲み終わらないうちに指先がぽかぽかしてきた。味も素朴でおいしい」。以来、毎日飲むようになった。Aさんは、「黒豆茶というと正月料理の甘い黒豆という印象しかなかったのに、こんなに健康によかったとは」と驚いている。
黒豆は、黒大豆とも呼ばれる大豆の一種。色が黒いのが特徴だ。黒いのはアントシアニンと呼ばれる色素で、この色素には、血液をサラサラにして血液循環を良くする作用がある。黒豆にお湯を注ぐと、アントシアニンが溶け出して、黒豆茶になる。これを飲むと、指先まで血液が通いやすくなって冷たかった指先が温まるわけだ。
15人中11人に効果
黒豆の血液サラサラ効果は、ノザキクリニック(兵庫県加古川市)の野崎豊院長が実験で確かめている。黒豆茶を飲む前と、飲んだ1時間後に0.1ミリリットルの血液を採り、細い管の中に通して血液のサラサラ度をみたところ、15人の患者のうち11人が飲む前より血液がサラサラになっていた。
野崎院長は1992年から自家製の黒豆茶を患者に提供している。「高血圧や糖尿病などの生活習慣病は、血液がドロドロで流れにくいことも原因の1つ」と考えているためだ。「血の巡りをよくすることを、東洋医学では"活血作用"と呼ぶ。黒豆は、古くからこの作用が高いといわれている」(野崎院長)。実際、「黒豆茶を飲み始めると、数日で血圧が下がってきた」などと、患者から好評だという。
黒豆茶には、体脂肪を減らす効果もありそうだ。アントシアニンは、体のエネルギー消費量を増やしもすることが、岡山学院大学の友近健一教授の研究でわかってきた。
友近教授の実験では、黒豆の煮汁を加えたエサと、通常のエサでラットを飼育した。すると、黒豆の煮汁入りの方が太りにくかった。「黒豆茶の人間が飲んだときのダイエット効果を現在、研究中」(友近教授)という。
自宅で簡単手作り
黒豆茶は、自宅で簡単に作れる。スーパーなどで売っている乾燥した黒豆(生豆)を用意しよう。
1人分の作り方は、黒豆を大さじに山盛り1杯(15−20グラム)分、そのままカップに入れて、電子レンジに1分半から2分ほど入れる。
表面の黒い皮に裂け目が入り、香ばしい香りがしてきたら電子レンジから出す。そのカップに熱湯を150−200ミリリットル注ぐ。フタをして約5分蒸らせばできあがり。
もっと多くつくりたいときは、黒豆をから煎りしよう。鉄製かアルミ製のフライパンに人数分の黒豆を入れて、中火の遠火(コンロから鍋をやや持ち上げる)で5−10分煎る。皮に裂け目が入り、香ばしい香りがしてきたら、から煎りを止める。後は1人分のときと同様に。
煎った豆を、鍋で煮出す方法もある。熱湯をそそぐときより味が濃く出るので、黒豆の量は半分ほどでいい。例えば、煎った黒豆50グラムに水1リットルを入れて、5−6分ほど煮出すとできあがる。煮出し時間が長過ぎるとどろりとするので注意したい。熱いうちに飲んだり、冷蔵庫で冷やして飲んでもいい。
黒豆茶はお茶を味わうだけでなく、飲み終わった後に残る"出しガラ"の黒豆も食べたい。"出しガラ"の黒豆には、お茶に出てこなかった健康成分が残っているからだ。
その代表が、オリゴ糖と食物繊維。整腸効果があり、腸内のビフィズス菌などの善玉菌を増やして、お通じを改善する働きがある。特に便秘が気になる人は試してみたい。
心臓病の予防も
たんぱく質も多く残っている。黒豆に含まれている大豆たんぱく質は、血液中の脂肪を減らして、心臓病などを防ぐ効果が確認されている。米国では、大豆たんぱく質を6グラム以上含む食品には、「心臓病を防ぐ」ことを表示できる。これは、ほぼ1杯分の黒豆を食べると満たせる量だ。
"出しガラ"の黒豆はそのまま食べられるが、料理にも使える。ヨーグルトやバニラアイスクリームに入れると香ばしさが加わる。オイスターソースを使った中華風いため物に入れてもおいしい。好みの食べ方を見つけながら、黒豆茶を楽しんでみてはどうだろう。
(『日経ヘルス』編集部)
・ 大豆の一種
・ 皮が黒く、「黒大豆」とも呼ばれる
・ アントシアニン
黒い色素。血液をサラサラにする
・ 大豆たんぱく質
血中脂肪を減らして心臓病などを防ぐ
・ オリゴ糖
腸内の善玉菌を増やし、お通じを改善
・ 大豆イソフラボン
更年期の症状を緩和
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