梅雨が明ければ、本格的な夏の到来だ。海水浴などレジャーはもとより、買い物など外出時も日焼けする機会が増える。美容面での影響だけでなく、ひどい場合には医師による治療が必要だ。夏の強い日差しとうまくつき合うには――。 |
「日焼けがひどい人は足まで皮膚が水ぶくれ。服を着るだけで肌とこすれて痛いという人も大勢来院した」。日大医学部で非常勤講師を務める高橋夫紀子かみさぎ皮ふ科医院(東京・中野)医院長は、昨年の夏こう振り返る。
体質や日差しの強さによるが、真夏の日中に6時間も肌をさらすと、皮膚はやけどのような炎症状態になる。最初はひりひりとした痛みを伴って赤くほてり、ひどい時には12−36時間後に水ぶくれができる。
日焼けは医学的にはやけどと同じ。まずはしっかり水で冷やす。症状が軽ければ化粧水のカーマインローションなどを塗って熱をとる。入浴や飲酒は体を温め、血行が良くなり、症状を悪化させるので避けた方が無難だ。
水ぶくれができたり、赤くはれ上がったりするほどひどければ、病院に行った方が良い。炎症を抑えるステロイド系の塗り薬などで治療してくれる。「水ほう状態にまで悪化した人でも、3日も使えばかなり炎症は改善する」(高橋医院長)。ステロイド系の薬は長期間使用すると免疫機能低下などの副作用があるとされるが、短期間なら問題ないという。
日焼けの原因は太陽光線に含まれる紫外線だ。これを浴びると皮膚のメラニン色素が増え、肌が黒く見えるようになる。紫外線には波長が長いUVAと短いUVBなどがある。UVAは作用は穏やかだが肌の深部に届き、しわやたるみを引き起こす。一方のUVBは表皮で吸収され炎症を起こし、シミやそばかすの原因になる。
日本では一般的に梅雨明け後の7−8が角紫外線量が最も多い。気象庁の観測施設がある茨城県つくば市では、昨年7月の紫外線量(UVB)が同12月の約7倍、那覇市では4倍弱となった。海水浴ではこれに砂浜や水面の反射が加わり、浴びる紫外線の量はさらに増える。
避暑で出掛ける山や高原も標高が高いため紫外線が多い。例えば長野県松本市の紫外線量は横浜市の1.4倍近くに達し、那覇市を小幅ながら上回るとするデータもある。
曇り空でも晴天時の6割強の紫外線が降り注ぐことが多い。曇りだからと油断して2日間肌をさらせば、晴天時の1日分以上の紫外線を浴びることになるので注意したい。
日焼けによる肌荒れやシミ、そばかすを防ぐには、何より紫外線から体をガードすることが肝要だ。
降り注ぐ紫外線を緩和するのに役立つのが日焼け止めだ。最近の製品は最新の技術を採用、紫外線防止効果が高い。海などで水着に着替えた際には、小鼻の脇や太ももの裏・側面など塗り忘れしやすい場所に注意したい。
日傘もUVカット効果のある素材を使ったものが増えている。これまで白いものが一般的だったが、実は黒など濃い色の方が紫外線吸収・日焼け防止効果は高い。
UVカットをうたう化粧品も効果がある。資生堂基盤研究本部の畑尾正人・副主幹研究員によると、「肌の強い人はSPFで20以上、肌が赤くなりやすい人でも50以上の表示があれば日焼け防止効果が見込める」という。SPFはUVBを防御する要素の数値。同社は、UVA、UVBそれぞれの特性に応じた紫外線吸収剤・散乱剤のほか、肌にダメージを与える活性酸素の増加を抑制する抗酸化剤などを配合し効果を高めている。
食事を通して体の内部から肌をケアすることも心がけたい。お薦めなのが「オレンジやキウイフルーツなどでビタミンCをとること」(江上料理学院)。
ビタミンCは皮膚の酸化を抑制したり、コラーゲンの生成を促したりして皮膚再生を助ける。オリーブ油などの含まれるビタミンEも抗酸化作用が見込める。
ただ、ビタミン類はあくまで補助的な役割。皮膚を作るのはたんぱく質なので魚や肉などの良質のたんぱく質も同時にとることが必要だ。「ゴーヤチャンプルーやニラレバいため、蒸したホタテや鶏肉にレモン汁をかけて食べるなどが手軽でバランスの良いメニュー」(同)という。
市販の薬剤も効果がある。エーザイの場合、シミや日焼け対策の主力商品にはビタミンCやEのほか、「皮膚の新陳代謝を助けるビタミンB2、B6やL−システインを含む」(薬粧事業部の村井浩プロダクトマネージャー)という。
こんがり焼けた肌を志向する人がいる一方で、美容などのため日焼けを嫌う人も多い。自分に合った日焼け対策をとりたい。
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