乳酸菌、トマト、ペパーミント

この時期、花粉症対策の食品やサプリメントが店頭に数多く並ぶ。「どれを選んだらいいか」「いつ摂取すべきか」。消費者にはわからないことも多い。使いこなすコツを考えよう。

花粉症はくしゃみ、鼻水、鼻詰まり、目のかゆみが典型的な症状。医師が処方する医薬品は、これらの症状を抑えるのに有効だが、「医者にいくのが面倒」「薬をのむと眠気に襲われる」などといって、医薬品以外での対策を考える人もいる。

続々登場する花粉症対策の食品、飲料やサプリメントはそんな人のための商品だ。含有する有効成分は、乳酸菌、トマト、ペパーミント、甜茶(てんちゃ)、シソの葉、シジュウム、西洋フキなどだ。

飛散前から摂取
まず、今シーズン話題の成分の1つが乳酸菌。腸内の善玉菌を増やし、便通を改善する効果が知られるが、最近、花粉症予防に効果があることがわかってきた。日大の上野川修一教授「乳酸菌は腸の免疫細胞に働きかけて免疫のバランスを改善し、花粉症になりにくい体質にする」と話す。

効果を厳密なヒト臨床試験で確認した乳酸菌は2種類あり、飲料、サプリメント、ヨーグルトとして商品化されている。その2種類以外の乳酸菌を含むもので、花粉症抑制を期待できるかといえば、複数の専門家は「試験結果がなくはっきりしないが、一定の効果があるのでは」と推測する。

乳酸菌による抑制は、「花粉が飛ぶ1カ月以上前からとり続けるのが望ましい」(上野川教授)という。医薬品と違い、飲んだらすぐ効く成分ではないからだ。

トマトやペパーミントもくしゃみや鼻水、鼻詰まりといった花粉症の症状を出にくくする効果があることが確認されている。どちらも即効性は強くないようだが、飛散開始日ごろから摂取し続けると、症状を軽減できるかもしれない。

トマトの有効成分は、加工用トマトやプチトマトの果皮に多く含まれるポリフェノールのナリンゲニンカルコン。この成分を含むトマトのサプリメントと、含まないものをのんだ人を比べた臨床試験では、前者の方が花粉飛散ピーク時の症状が軽かった。

ただ、ナリンゲニンカルコンを食事でとって効果を得ようとすると、加工用トマトを1日に10−20個分、プチトマトなら60個分程度食べる必要がある。また、スーパーに並ぶ桃太郎などの生食用トマトにはこの成分は含まれないから食べても効果はない。

ペパーミントの有効成分は、清涼感のある香り成分を取り除いたあとに残るポリフェノールで、ミントポリフェノールと呼ばれる。これまで捨てられていた残りの部分に、花粉症にいい成分が入っていたわけだ。

臨床試験では、ミントポリフェノールのエキス300ミリグラムを配合したお茶を飲み続けた人は、エキスなしのお茶を飲んだ人に比べ、花粉の飛散量が少ない時期に、鼻の粘膜のはれが抑えられた。ただ、花粉の飛散量が多くなると、症状抑制効果はなかったという。

研究をした岡山大学薬学部の亀井千晃教授は「花粉飛散量が少ない今季はいいのでは」と語る。300ミリグラムのエキスは、ミントの葉だと約16枚分に相当する。

甜茶やシソの葉もほぼ同様に、花粉症の症状を抑制する効果が臨床試験で確認されている。

鼻水を抑える
「実際に花粉症の症状が出た。どうしよう」。こんな人向けの即効性の高いサプリメント成分も2種類登場している。

1つは、南米原産のフトモモ科の植物「シジュウム」のスプレーだ。くしゃみや鼻水を抑える効果を、東邦大学医学部の鈴木五男助教授が確認している。臨床試験によると、シジュウムのスプレーを1日に4回、鼻に噴霧すると、7割超の患者で症状が改善した。「花粉症の薬と同様、多少眠くなる場合もあるが、効果は抗ヒスタミンの医薬品と比べても、そん色ない」(鈴木助教授)という。

シジュウムのお茶も商品化されているが、即効性は期待できないという。「1月中旬ごろからのみ続けると、症状を軽減できるだろう」と鈴木助教授は話す。

西洋フキのサプリメントは、やっかいな鼻詰まりによく効く。西洋フキは、日本の食用のフキとは全く異なる。西洋フキの根から抽出されるペタシンが有効成分で、鼻詰まり原因物質ロイコトリエンの働きを抑えるとされる。

花粉症対策の食品やサプリメントは、医薬品に比べて副作用がほとんどない。複数を同時に利用したり、薬と併用したりしても相互作用の心配は少ないとみられるが、「複数とるなら作用の異なるものを」(鈴木助教授)。不調を感じたらすぐに中止して、医師などの専門家に相談しよう。
(『日経ヘルス』編集部)

花粉症対策の成分と期待される作用

▽乳酸菌・ヨーグルト 免疫細胞(Th1とTh2)のバランスを整え、アレルギー体質を改善
▽トマトの果皮 アレルギーの原因となるヒスタミンとロイコトリエンの放出を抑制

▽ペパーミント

同 上
▽甜茶(てんちゃ)
同 上
▽シソの葉
同 上
▽シジュウム 体内に放出されたヒスタミンの作用をブロック(鼻水、くしゃみに有効)
▽西洋フキ 体内に放出されたロイコトリエンの作用をブロック(鼻詰まりに有効)
2004.2.21 日本経済新聞