飽きのこない料理法
毎日なら味付けに変化 残りものはスープに

買ってはみたが困ってしまう――。1人暮らしで使い切るのが難しいキャベツなどの結球野菜。安くて親しみやすいだけに、何とかおいしく調理し、使い尽くしてしまいたい。その他の野菜でも、傷んだり余らせたりするのが嫌で、購入を思いとどまってしまうこともある。達人達にコツを聞いてみた。

大ぶりの結球野菜の代表選手といえばキャベツ。今は秋キャベツが旬だ。「トンカツと一緒に、千切り用に買ったりするんじゃないかしら」と話すのは料理研究家の小林カツ代さん。さすがに1人暮らしだとキャベツを丸ごと1個買うことはあまりないので、「2分の1個買った」と仮定し、おいしく食べ切るレシピを教えてもらった。

新鮮なうちは生で食べるのがいいが、問題は2日目以降だ。ずっとキャベツを食べ続けたら飽きるかも、と考える人もいるだろう。ポイントは「主菜や副菜、漬物など使い方のアレンジを考えること」。味付けに変化を出すことが重要だ。バターを加えると洋風になるし、コンソメ味にするとあっさり食べられる。

表にした煮込みや漬物、いためものなどを試してみたが、毎食食べても不思議と飽きなかった。料理する際、あると便利な食材は、ちりめんじゃこやベーコン、梅干しなど。自宅に常備していなくてもコンビニエンスストアで手に入る食材ばかりだ。

1枚だけ葉をむいてから切る人が多いかもしれないが、「キャベツの外側の葉は一番栄養が多いので捨てるのはもったいない」(小林さん)。水を入れたボールに切り口を泳がせて汚れを落とし、丸ごと使うのが小林さんのやり方。1回の調理で4分の1程度ずつカットして使うのが目安だ。

12月になるとやはり結球野菜の白菜が旬を迎えてくる。「白菜もキャベツと同じ容量で調理できます」(小林さん)。白菜は缶詰のツナやサケとも相性がいいという。

ただ、いくら旬のものでも、鮮度が落ちたらおいしさ半減だ。日本ベジタブル&フルーツマイスター協会(東京・渋谷)が認定する「野菜のソムリエ」の久原ルミ子さんは「丸ごとキャベツや白菜なら芯(しん)をくりぬき、湿らせてキッチンペーパーを詰めると長持ちする」とアドバイスする。野菜は冷蔵庫内では畑で育ったときのように立てた状態が逃げにくく、おいしさも長続きする。

実はこのキャベツの芯、水につけておくと新しい葉が生えてくる。「この葉も食べられるんですよ」と小林さん。秋キャベツは成長しにくいが、「春キャベツは立派な葉が出ます。ぜひ試してほしい」と話す。

使い残しで小さくなってしまった野菜が何種類も冷蔵庫にたまってしまうことも、1人暮らしではよくある。そんなときに青果物健康推進委員会(東京・渋谷)の理事の近藤卓志さんがお薦めするのはスープにしてしまうこと。コツは「あらびきソーセージなど、脂肪分が多いものと煮込むこと」と近藤さん。肉と野菜のうまみが溶け合い、奥行きのある味になる。次の日はルーを入れてクリームシチューにしたり、と変化もつけやすい。つくりすぎたスープはプラスチック容器などに入れて冷凍保存する。

ホウレン草やゴボウなど、結球野菜でなくても使い切れないことはあるはず。そんなときは下ゆでしてから冷凍する。1食分ずつ小分けしておくと、電子レンジで食べる分だけ解凍できる。再び熱を加えることになるので、ゆでたてを食べるときに比べて8割程度に熱を通すのがポイント。トマトを冷凍すると後でトマトソースを作るときに使える。「解凍するときに皮がむけるので手間も省ける」(近藤さん)。

一方、1回の調理で使い切れるサイズのミニ野菜を使うという解決法もある。タマネギ、ニンジン、キュウリ、ナスなど主要なスーパーで手に入るようになった。野菜はカットすると切り口から傷むが、「ミニ野菜だと1食ごとに使い切れる」(久原さん)。割高にはなるが、栄養価は変わらないものが多く。見た目にもかわいらしい。

小口購入なら残らない
1人暮らしで、なかなかスーパーへ行く時間もない人は、こんなサービスを利用してみてはいかがだろうか。

食材宅配サービスの、らでぃっしゅぼーや(○電0120−831−375)は1週間で使い切ることを目的とした「ジャストぱれっと」を宅配している。キャベツや大根など大きな野菜は3分の1−4分の1にカットしてある。野菜8種類程度と果物1−2種類がセットになって、料金は2205円。

ミニ野菜は流通が広がりつつあるので、大手スーパーでは見つけやすいだろう。カボチャもミニ品種の「坊ちゃん」が出ている。大きなカボチャはお買い得だが、1人暮らしではなかなか使い切れるものではない。小林さんは「冷凍野菜を使うのも手です」とアドバイスしていた。


小林カツ代さんお薦め献立
(千切り用にキャベツ半分買ったとき)
2日目漬物
2センチ角に切って、ほぐした梅干しと塩でもんでつける。30分後から食べられるが、一晩おくといい。「3、4日はもちます」
3日目サワー煮
ざくざく切ったものに、ブイヨン小さじ半分、ちりめんじゃこ、水1カップ強、塩、こしょうを加えて煮込む。最後に酢少々を加える。
4日目ソテー
バター、ベーコンを火にかけ、キャベツをしいてふたをする。仕上げにこしょうと塩かしょうゆを

近藤卓志さんお薦めの献立
2日目野菜スープ
キャベツのほか、ニンジン、タマネギ、ジャガイモ、あらびきソーセージ、ブイヨンなどを入れて煮込む。たくさん作ったら容器に入れて冷凍
3日目クリームシチュー
前日のスープにシチューのルーを入れる
4日目お好み焼き
残りのキャベツを全部入れる
2004.10.9 日本経済新聞