● 性病とは
本来は特定の病気を指しますが、近年では性交渉によって感染する病気全体を指す事が多くなっています。
抗生剤の開発により以前より治癒(ちゆ)しやすくなってきた反面安易な性交渉や度重(たびかさ)なる感染を経て抗生剤が効かない又は効きにくい病原体が増加しています。
自覚症状の強い病気は早期に、他人に感染する前に治療を受けるため減少してきていますが、自覚症状の弱い病気は治療が遅れて感染を広めています。特に女性は全般的に自覚症状が弱く、知らずに感染を広めている事もあります。
性病に限らず、感染症は一つの病原体が体内に侵入したとしても感染するわけではなく、病原体が体内で増殖して免疫(めんえき)能力を超えてしまうと感染・発症となります。
感染のルートは、多くの場合には血液や唾液(だえき)などの分泌物により感染します。傷や粘膜(唇みたいな皮膚)は、体外からの侵入に弱く病原体が入り込みやすくなっています。性交渉自体が、粘膜と粘膜を擦(こす)りつける動きなので粘膜に傷もできやすいといえます。理屈上は、病原体と傷や粘膜への接触がなければ感染の可能性はありません。
現在、性病で1番多いのが尿道炎です。これは、おしっこをする時に痛みやカユミがあり、膿(うみ)で下着が汚れたりする病気です。性交渉はもちろん、オーラルセックスでも感染する可能性があります。
もし心当りがあって、違和感や不安感がある時は早めに検査を受ける事をお勧めします。
▼よく聞く性感染症
クラミジア 淋病 エイズ(HIV)
梅毒 ヘルペス カンジタ
毛じらみ 尖圭コンジローム
● クラミジア
クラミジアの原因はクラミジア・トラコマティスという細菌によるもので、欧米ではもっとも数の多い性感染症です。ここ数年、日本でも10〜20代の女性の感染者が爆発的に増えていますので注意して下さい。性交渉により感染しますが、クラミジアは性器以外の咽喉部にも感染しますので、最近はオーラルセックスでの感染が非常に多くなっています。感染した場合でも自覚症状の無い場合があり、男性で50%・女性で80%の人が感染に気付かないと言われています。
【症状】
男性 ・・・ 排尿時に軽い灼熱感を感じます。サラサラした分泌液が出ますが、重症の場合は痛みや膿が出てきます
女性 ・・・ 排尿中に下腹部の痛みや性交中に痛みを感じます。
【潜伏期間】
1〜4週間
【検査方法】
尿や分泌液を採取して検査します。
【治療方法】
抗生物質の内服による治療を行います。治療をしない場合でも1ヶ月程度で症状が治まる事もあります。症状がなくなっても治っているわけではありませんので、必ず治療をして下さい。そのままにしておくと感染者を増やすばかりではなく、不妊症の原因になります。また、クラミジアに感染している場合、通常に比べて4倍の確率でHIVに感染する事が最近の研究で報告されています。治療期間は1〜2週間程度です。
● 淋病
淋病の原因は淋菌という細菌によるもので、性交渉により感染する性病です。淋菌もクラミジアと同じように性器だけではなく咽頭部にも感染します。クラミジアの次に多い性感染症で、クラミジアと同時に感染することがあります。
【症状】
男性 ・・・ 最初は尿道に軽い不快感があります。その後、数時間もするとおしっこの途中に強い痛みが襲ってきます。同時に粘り気のある黄色い膿も出始めます。また、おしっこの回数が増え、ペニスの開口部は赤く腫れ上がる事もあります。
女性 ・・・ 多くの場合、自覚症状はありません。症状が進行すると排尿痛や頻尿、残尿感が現れ、黄緑色や悪臭を伴うようなおりものが増えます。
【潜伏期間】
2〜10日
【検査方法】
尿や分泌液を採取して検査します。
【治療方法】
抗生物質の内服による治療を行いますが、最近は通常の抗生物質では治らない淋菌も増えていますので、その場合は検査が必要になります。治療期間は1〜2週間程度です。
● エイズ
エイズは「後天性免疫不全症候群」といわれ、HIV(ヒト免疫不全ウィルス)というウィルスに感染し免疫力が低下する事が原因です。主な感染経路は性的接触による感染・血液感染・母子感染があります。
【症状】
HIVウィルスに感染した場合、2〜8週間後に風邪に似た症状が一部で見られますが、特別な症状ではないので、多くの人は気が付きません。その後は無症候性キャリアといわれる何も症状の無い期間になりますが、この間HIVウィルスは身体の中で増殖し免疫機能を低下させていきます。その後、リンパ節が腫れ、下痢、発熱、体重の減少などのエイズ関連症候群といわれる症状が現れます。この状態は、エイズ発症の初期段階といわれています。
【潜伏期間】
6ヶ月〜15年
【検査方法】
エイズの検査は、HIV抗体の検査になりますので、感染してから抗体ができるまでに検査を受けても正確な結果は得られません。感染の可能性があった時は、抗体ができる2ヶ月後に検査を受けるようにして下さい。
【治療方法】
エイズは発症してからの治療が困難なため、HIVウィルスの増殖を抑えるさまざまな抗HIV薬が世界中で開発されています。治療方法は数種類の抗HIV薬から3〜4種類を服用する多剤併用療法が標準的な治療になります。この多剤併用療法による治療により、現在では、日和見感染症などの発症率や死亡率が低下しています。
● 梅毒
梅毒の原因は梅毒トレポネーマという細菌によるもので、主に性交渉で感染します。梅毒は、コロンブスが新大陸発見と共にヨーロッパに持ち帰り、世界中に広がったといわれています。感染者が妊婦の場合は、胎児に感染しますので注意が必要です。
【症状】
第1期 ・・・ 性器に赤色をした小さなしこりやただれが見られ、股のリンパ節が腫れてきますが、痛みなどの自覚症状が少ないので、気付かずに見落とす事があります。
第2期 ・・・ 皮膚や粘膜に梅毒特有の発疹が出始めます。発疹以外にも脱毛や発熱、倦怠感や頭痛などを感じ、性器に無痛性潰瘍の扁平コンジロームが出来るなどの症状が見られます。
第3期 ・・・ ゴム腫といわれる結節ができ、全身のあらゆる器官に異常が見られます。脳や脊髄に影響が出ると麻痺や精神障害を起こし、やがては死に至ります。
【潜伏期間】
第1期 3週間〜3ヶ月
第2期 3ヶ月〜3年
第3期 3年以上経過
【治療方法】
ペニシリンの内服や注射で治療を行います。ペニシリンのアレルギーがある場合は、他の抗生物質による治療になります。治療期間は症状の段階により変わりますが、2週間〜3カ月程度になります。
● ヘルペス
ヘルペスの原因は単純ヘルペスウィルスによるものです。このウィルスにはHSV-1とHSV-2の2つのタイプがあります。通常、HSV-1は口唇に感染しHSV-2は性器に感染するウィルスですが、最近はフェラチオなどのオーラルセックスにより、口から性器、性器から口への感染が増加しています。
【症状】
性器に小さな痛みのある水泡や潰瘍ができます。歩行時や排尿時に痛みなどで支障をきたしますが、2週間程度で自然に症状は治まります。
【潜伏期間】
1〜2週間
【治療方法】
抗ウィルス薬による治療を行います。ヘルペスは1度感染すると、疲れた時など免疫力が低下した時に再発しますので、症状がでた時は早めの治療を心掛けて下さい。治療期間は1週間程度です。
● カンジタ
カンジタの原因はカビの1種であるカンジタ・アルビカンスという真菌によるものです。この真菌は誰もが持っているものなので通常無害ですが、抗生物質や経口避妊薬を長期間使用した場合や身体の免疫が低下したときに発症します。女性の10%は膣内にカンジタ菌がいるといわれています。
【症状】
男性 ・・・ 亀頭と包皮が炎症をおこし、かゆみが出てきます。
女性 ・・・ 外陰部にかゆみや痛みを感じ、酒カスのような白いおりものが出てきます。
【治療方法】
洗浄をした後に抗真菌剤のクリームや膣錠で治療を行います。治療期間は2週間程度になります。
● 毛じらみ
毛じらみの原因は1〜2mmのしらみが陰毛に寄生する事によるものです。性交渉以外でもベットやタオルを共用したり、プールやサウナで感染する事もあります。
【症状】
毛じらみが血を吸うため、陰毛の生えている部分の皮膚に赤い斑点を伴った激しいかゆみがあります。
【潜伏期間】
1〜2週間
【治療方法】
パウダーや軟膏などの塗布薬により治療を行います。治療期間は1〜2週間程度です。
● 尖圭コンジローム
尖圭コンジロームの原因はヒトパピローマウィルスの感染によるものです。主に性交渉で感染します。子宮頸ガンや陰茎ガンになるウィルスとの関連もあるといわれています。
【症状】
性器に赤色やピンク色の小さなイボができます。そのままにしておくと増殖して鶏冠状やカリフラワー状の大きなイボになってきます。痛みはありませんが、稀に炎症を起こしてかゆくなる場合があります。
【潜伏期間】
1〜8ヶ月
【治療方法】
手術や抗がん剤などの塗り薬を使用して治療を行います。再発をくり返すことが多いので、再発した場合は、早期の治療を心掛け、根気よく治療し続ける必要があります。
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