失われがちな水分を
体内から補う新発想

ヒアルロン酸といっても男性には耳慣れないかもしれないが、保湿化粧水などに含まれ、保湿成分として知られているため、女性には身近な言葉だ。最近、そのヒアルロン酸を「食べる」ことに注目が集まっている。「食べて健康づくり」をめざすキューピー株式会社では、独自のヒアルロン酸抽出精製技術をもとに、科学的検証を重ねながら、「食べるヒアルロン酸」"ヒアロモイスチャー"を開発、年齢を重ねてもみずみずしい美しさを保つための新しい食生活を提案している。みずみずしいうるおい維持に関心の高い女性はもちろんのこと、いつまでも若く活力あふれる容ぼうを保ちたい男性にも大いに気になるところだ。

驚異的な保水力をもつヒアルロン酸
そもそもヒアルロン酸とは、どんな成分だろうか。ヒアルロン酸は人体の組織に広く存在し、なかでも皮膚、関節、軟骨、腱(けん)、血管、心臓、眼球、脳などに多く分布する。ムコ多糖類の一種であり、たっぷりと水を抱え込む保水力の高さが特徴。

人体の3分の2は水でできているといわれるが、その水分が流れ出したり蒸発することなく、しっかりと体に固定されているのは、ヒアルロン酸など体内に存在する保水成分の働きが大きいと考えられる。人体は約60兆の細胞でできており、その細胞と細胞をしっかりつなぎとめるマトリックスのなかで、細胞間のすき間を埋めるようにヒアルロン酸が存在するのだ。

皮膚は肌の表面から表皮、真皮、皮下組織の三層構造でなりたっており、真皮の健康が美しさには重要といえる。真皮は、ヒアルロン酸を中心にコラーゲンやエラスチンと呼ばれるたんぱく質の一種があり、その3つの働きが美しさを左右する。コラーゲンはヒアルロン酸と同様にたっぷりと水分を抱きかかえる性質を持ち、エレスチンは繊維状の成分でコラーゲン同士をバネのように支え、その立体構造のすき間をヒアルロン酸が埋めるように存在している(図1)。

若いうちはヒアルロン酸が豊富で、コラーゲンが太い束になって立体的に交差しているが、年齢とともにヒアルロン酸が減少し、コラーゲンも細くなり抱きかかえる水分量は減っていく。また、エラスチンも伸びきったゴムのようになり弾力がなくなっていくといわれている。

加齢とともに失われる成分をいかに補うか

生まれたばかりの赤ちゃんはプリプリして弾力があるが、年をとるにつれ弾力が失われていく。この自然の摂理にも、ヒアルロン酸は深く関係している。

人間の体はもともと自分でヒアルロン酸をつくり出す能力をもつが、その力は老化とともに衰えていくことがわかってきた。その一方で、体内のヒアルロン酸はどんどん消耗する。体内のヒアルロン酸が半減するまでの期間は2週間といわれている。

つまり、人間の体は日々新しいヒアルロン酸を必要とし、需要に供給が追いつかなくなり、うるおいの現象を感じるようになる。生まれたばかりの赤ちゃんのヒアルロン酸量を100とすると、40歳で50%くらいまで減少し、70歳では20%ほどまでに減るという(図2)。

年齢を重ねてなお、みずみずしく美しさを保つために、従来は保湿化粧品などで外から補う手法が主流だった。そこに、最近は内側から「食べて」補うことが注目され始めたのだ。

鶏と卵の研究から始まったヒアルロン酸の科学
ヒアルロン酸は人体以外にもさまざまな天然素材に含まれている。ヒアルロン酸の優れた働きは以前から知られていたが、これを高純度で抽出することが技術的に難しかったため、十分には活用されてこなかった。ヒアルロン酸を多く含むのは、動物の皮や眼球といったふだん捨てられがちな部分なので、日常の食生活から補うことも、現実的には難しい。

そんななかで、国内の卵の約90%(約38億個、2003年実績)を使っているキューピーでは、創業以来マヨネーズ製造などで卵を扱ってきただけでなく卵や鶏の機能性の研究も深めてきた。その研究成果のひとつとして、鶏のトサカから高純度のヒアルロン酸を抽出する技術を確立。優れた保湿力をもつヒアルロン酸は広く美容分野などで役立てられている。

さらにキューピーではヒアルロン酸を「食べて」うるおい維持を図ることを研究。科学的な検証を行い、うるおい維持のための望ましいヒアルロン酸摂取量を追及した。

体内から美しさを維持する

これを踏まえ開発されたのが、栄養補助食品「ヒアロモイスチャー」だ。実際に1日目安量240ミリグラムの高用量ヒアルロン酸を含む同品を食べ続けた人からは、「食べることによりしっとりしたうるおいが得られた」という声が多数寄せられており、有効回答者の53%が「うるおいが出てきた」、93%が「これからも使い続けたい」とコメントしている(2003年キューピー調べ)。ヒアルロン酸を食べることによってどのようにうるおいが補給されるかという点は、今なお研究が進められており、注目していきたいところだ。

いつまでも美しく、みずみずしさを保ちたいというのは女性の共通の願い。これまでは紫外線対策や乾燥を避け、保湿に注力するなど外からのケアばかりが意識されてきたが、これからは食事で栄養バランスをとると同時に、食事からとりにくい成分を栄養補助食品を利用して補うといった、内からのケアがますます増えていきそうな勢いだ。

管理栄養士が語るヒアルロン酸
食べて健康維持  これが基本です
管理栄養士/ヘルスプランニング・ムナカタ主宰
宗像伸子氏

人は皆、同じように年を取るのでしょうか。周囲を見回すと、80代でも50代の生き生きとした若さを保っている人がいれば、50代なのに10歳も15歳も年上に見られる人もいます。

さらに注意深く見ると、実年齢より大幅に若く見える人は、3度3度の食事をきちんととり、それもいろいろな食べ物をバランスよくとっていることに気づくはずです。逆に老けて見える人は食生活が不規則で偏っていることが多く、しかも生活習慣病を抱えている可能性が高いのです。

美しさの維持のためにすることというと、化粧品などで外から栄養を補うと考えがちですが、じつは最も大きく影響するのは食生活です。体内から肌の美しさを支える成分には、ビタミンCがあります。細胞をつくる素となる、良質のたんぱく質をとることも重要です。「年を取ったから、肉はいらない」などという人もいますが、むしろ年を取るほどバランスよくビタミン、ミネラル、たんぱく質を取っていくことが大事になります。

最近は美しさの基本のひとつといえるうるおい維持の研究が進み、食べてヒアルロン酸を補給するという考え方も出てきました。

動物や魚の皮や眼球などに含まれる成分ですので、これを毎日の食事からとることは難しく、栄養補助食品などを上手に使えばプラスに働くと思います。

その際、健康を支える底辺である食生活バランスがとれた上で、とりたい栄養成分を手軽に補える栄養補助食品を活用するとプラスが大きいことを、ぜひ覚えてほしいと思います。健康維持も、食べることから始まるのです。

 

2004.11.13 日本経済新聞