冬の代表的な果物のリンゴ。美肌効果や整腸作用などのほか、生活習慣病やアレルギーを予防する働きがあることも新たにわかってきた。血液をサラサラにする効果も報告されている。「1日1個で医者いらず」。こんな養生訓を持つリンゴの効用に注目が集まっている |
美肌や整腸作用も
「母がよく、肌がきれいなのはリンゴを食べているから、と言っていた。小さなころは冗談かと思っていたけれど……」。こう語るのは長野県須坂市に住む会社員、田中富美子さん(36)。「確かに母の肌はきれい」という。もう1つ、実感するのが整腸作用。食べると便秘が治るからだ。ビフィズス菌などの善玉菌が増え、それが便通を良くする。田中さんは美容と健康を兼ね、毎年春先まで1日1個は食べることにしている。
こうした効果は結構知られているが、最近の研究ではさらにいろいろなことが解明されつつある。その1つが血液のサラサラ効果だ。長野女子短大、長野県立須坂病院、JAグループの長野県農村工業研究所の共同研究チームが11月下旬、順天堂大医学部で開かれた「日本ヘモレオロジー学会」で報告した。
長野女子短大の山浦由郎客員教授(薬理学)によると、女子学生22人を2判に分け、1班は1日1個のリンゴ、もう1班は2個分に相当するジュースを1週間とってもらった。その前後の血液のサラサラ度を比べた。
健康な女性の場合、血液の毛細流路を通過する時間の平均基準値は45秒。この値が60秒以上になると、血管内の血液の流路に障害が見られ、血流が悪くなるという。
実験前、全22人の血液の通過時間は平均60.8秒。それが1週間摂取し続けた直後には53.4秒に短縮した。特にジュースを飲んだグループは、72.4秒から47.1秒へと大幅な改善が見られた。ただし、食べなくなると1週間で元の数値に戻った。
心臓病や脳卒中に
血液のサラサラ効果だけではない。心臓病や脳卒中など様々な生活習慣病をもたらす高脂血症を予防する効果があることも、最近の研究でわかってきた。高脂血症とは、血液中のコレステロール、中性脂肪のいずれかが標準値より高い状態をさす。
研究したのは独立行政法人、農業・生物系特定産業技術研究機構の果樹研究所(茨城県つくば市)。リンゴが血中の中性脂肪を下げることを、同研究所の田中敬一・品質化学研究室長らが実験で突き止めた。
男性8人、女性6人のボランティアに1日1個半から2個のリンゴを3週間食べてもらい、血中の中性脂肪の変化を調べた。それによると実験前に比べて中性脂肪は平均で21%下がり、基準範囲を上回っていた人は基準範囲内まで改善したという。
また、アレルギーの予防効果にも注目が集まっている。1471人の症例を分析した英国の研究では、1週間に2回以上食べる人は気管支ぜんそくにかかるリスクが32%減ったことがわかった。さらに果樹研究所の田中室長らが実施した実験でも、リンゴに含まれるペクチンを摂取すると、摂取前に比べてアレルギー発症の原因物質である血中ヒスタミン濃度が24%減少したという。「リンゴは気管支ぜんそくなどアレルギー予防に有効と考えられる」と田中氏は話す。
おいしさ見極め
効用は様々あるが、果物である以上、おいしく食べたいもの。おいしいリンゴを見きわめるコツは何か。それは音と重さが1つの目安になる。軽くたたいたときに金属音に近い音がし、果肉に張りがあってずっしりと重いものがお薦め。「ふじ」などのように赤いリンゴの場合、お尻の部分に緑色が残ってなく、真っ赤になっていれば完熟している証だ。
ただ、食べ時を逸してしまった場合、そのまま食べずにジュースなどに加工するのもいいだろう。青森県りんご対策協議会はさまざまな提案をしている。一度、ためしてみてはいかがだろう。
アップル豆乳
【材料】
リンゴジュース1/2カップ、豆乳1/2カップ、塩1グラム
【作り方】
豆乳にリンゴジュースを加え、よくかき混ぜる。コアントロー(洋酒)で香り付けしてもよい。
カロチンドリンク
【材料】
リンゴ100グラム、ニンジン100グラム、レモン10グラム、ハチミツ大さじ2杯、砂糖大さじ1杯、炭酸水1本
【作り方】
リンゴとニンジン、レモンをジューサーにかける。ハチミツ、砂糖を加えて混ぜ、飲む前に炭酸水で2倍に薄める
ミステリードリンク
【材料】
リンゴジュース1/2カップ、ブルーベリージュース1/4カップ
【作り方】
グラスに両方のジュースを入れてかき混ぜる。グレープフルーツジュースを代用してもよい。
(注)青森県の小冊子「青森りんご」から。材料はいずれも4杯分 |
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