韓国で焼き肉を注文すると、必ず肉と一緒にチシャ、エゴマの葉、ニンニク、青唐辛子といった山盛りの生野菜が出てくる。もちろん、白菜やダイコン、キュウリのキムチがある。ホウレン草やモヤシ、ニンジン、いためたぜんまいなどのナムルもある。これだけたくさん野菜が出ると、肉は添え物といった感じになる。

食べ方にも特徴がある。手のひらサイズの生野菜を手にのせ、中央に焼き肉とニンニク、みそを置き、くるりと巻いてほおばる。これは韓国独特のサム(包むの意味)という食べ方で新鮮な野菜の歯ざわりと香りが食欲を促す。

たっぷりの野菜を前にして、さぞや金を取られるのではないかと心配になるが、こういった野菜は基本的に無料で、たりなければいくらでも出してくれる。これが韓国の昔からの食習慣というのだ。ビビンパや冷めんにも野菜はついてくる。統計によると韓国人は日本人の1.6倍の野菜を食べているとか。

生活習慣病は野菜不足で起こるとも言われているが、野菜をたくさん食べる韓国の場合はどうだろうか。日本人と比べると。がんの死亡率は約4ポイント、心筋こうそくのような心臓病の死亡率は何と57ポイントも低い。スリムな人が多く、肌も美しく、スタミナがあることもよく知られている。

昨今のヨン様ブームをはじめ、今まで考えられなかったほど韓国との交流が深まっているのは素晴らしい。日本人の日常の生活も韓国並みに野菜をたくさん食べる習慣が定着すれば、健康長寿の面からも、よりうれしい結果が得られるのだろう。
(新宿医院院長  新居 裕久)
2005.1.29 日本経済新聞