風通しいい靴を使用
気になったら皮膚科で検査を
目立ち始めた女性患者

湿気が多く水虫に悩む人が増える季節がやってきた。足がむずむずかゆくなるだけでなく、放っておくと爪(つめ)のほか、手など体の他の部分にうつることもあり厄介だ。男性に多いというイメージが強いが、実は女性患者も珍しくない。水虫を防ぐにはどうすればよいか。

日本人の約5人に1人は感染しているといわれる水虫。原因となるのはカビの一種、白癬(せん)菌だ。一般的なカビと同じようにじめじめした環境を好み、皮膚の角質や爪などをえさにする。25−35度が適温。靴の中はほとんど湿度100%の状態のため、高温で蒸れた靴の中は白癬菌の格好のすみかになる。

以前は男性がなりやすいといわれていたが、これは長時間靴を履く環境で働くため。働く女性が増えたのとブーツの流行に伴い、性差はほとんどなくなりつつある。医療用医薬品、ヤンセンファーマ(東京・千代田)が昨年12月に実施した調査によると、働く女性の25.4%は水虫だと思ったことがあるほか、11.2%は実際に水虫と診断されたことがあるという。

「靴を履いているとどうしても風通しが悪くなり、足元が蒸れる。水虫は一種の文明病」と東京女子医科大付属第二病院皮膚科の原田敬之教授は解説する。一度感染してしまうと塗り薬や飲み薬をとりながら、長期間の治療が必要。乾燥して寒くなる冬季は白癬菌の活動が衰えるため、いったん症状が回復する。そこで治療をやめてしまう人が多いが、夏には再びかゆみが発生し、完治しない悪循環のケースが多いという。

水虫は他の部分に移転することもある。要注意なのが爪白癬。足水虫患者の半分近くが足の爪にも水虫を患っている。かゆみはないが白や黄色に変色し、厚くなったり、ボロボロになったりする症状を引き起こす。

水虫を予防するにはどうすればいいのか。静岡市立清水病院皮膚科の杉浦丹科長は「1日1回足をよく洗えば菌がすみつくことはない」と説明する。薬用石けんなどを使う必要はない。風呂に入った時、足の裏や指の間を洗い水気をふき取って乾かす。傷ができると菌が入りやすくなるので、角質をとるためにあかすりや軽石でごしごし洗いすぎないようにする。

肝心なのは足を清潔に保ち、通気をよくすることだ。ただ、水虫患者がいる家庭では風呂場のマットや床、じゅうたんを通じて家族に感染してしまう可能性が高い。特にマットは乾燥した清潔なものに取り換えることが大切。スリッパは共有しないことが望ましい。

1人暮らしの人も安心は禁物だ。はだしで歩く所だったら「ほこりと白癬菌は一緒に散らばり、どこに落ちていてもおかしくはない」(原田教授)という。温泉やスポーツクラブの足ふきマットを踏んで水虫に感染することも考えられる。靴下を履く前に洗った足をタオルでよくふくことを忘れないようにしよう。

女性は同じ革靴でも先の丸いデザインのものを履く方が細いデザインの靴を履くより水虫になりにくいようだ。「先が細いと足の指がくっついて蒸れやすくなる」と野村皮膚科医院(横浜市)の野村有子院長は話す。靴を履くときは素足より靴下かストッキングを履いた方が汗を吸収し、予防につながる。

同じ靴を毎日はき続けないで3足くらいを交代で履いたり、時々陰干しするのも効果的だ。「サンダルでも、毎日同じものを履いているとパンプスと同じように水虫はつきやすくなる」(野村院長)という。

「自覚症状から水虫ではないのに水虫と判断し、薬局で買った薬で皮膚がかぶれてしまう人もいる」と原田教授は話す。皮膚科専門医でも見ただけでは判別するのは難しく、顕微鏡の検査を必要とする。「水虫だと思っている患者の半分は水虫ではなく、ほかの皮膚病であることもある」と杉浦科長。酢に足をつけるという民間療法も聞くが、「酢はカビを殺すほどの殺菌力はない」ようだ。

まだまだ水虫が恥ずかしい病気だという意識は強い。「女性は来院をためらいがち」(原田教授)というが、気になる人は早めに皮膚科専門医に診察してもらい、快適な足元を心がけたい。


水虫の症状

足水虫

・趾(し)間型
強いかゆみがある。赤くただれたり、白くふやけてじくじくしたりし、特に靴で圧迫される薬指と小指の間に発生する
・小水疱型
主に土ふまずや指の付け根、足の線縁に赤くなった小さな水疱ができる。時間がたつとかさぶたになってはがれる
・角質増殖型
足の裏全体、特にかかとの角質層が厚くなりボロボロ皮がむける。赤ぎれのようになることも
爪水虫
爪が白または黄色くにごり、先が厚くなったりボロボロと取れたりする

水虫を防ぐ4ヵ条
1
1日1回は石けんで丁寧に足を洗う。60%がし間型。指の間もしっかり洗い、タオルで水気をよくふき取り、乾燥させる
2
オフィス環境で靴を脱ぐのは難しいが、たまに風を通したり、通気性のよい履物を用意する。同じ靴をはき続けないこと
3
水虫患者がいる家庭ではバスマットはこまめに選択し、スリッパは共有しない。外ではだしになる場合は足を清潔にしてから靴下をはく
4
気になる症状が出たら、水虫診断のために一定のトレーニングを受けた「皮膚科専門医」の診察を受ける。自覚症状だけでは判断しずらい


2005.6.4 日本経済新聞