ゆったりリラックスできるバスタイムに、ちょっとした筋力トレーニングを加えてみてはどうだろう。水圧や浮力でトレーニング効果が高まるうえ、体ぽかぽかで脂肪の燃焼もすすむ。毎日少しずつ続ければ、スリムで太りにくい体づくりに役立ちそうだ。
「お風呂は効果的なエクササイズをするのに、適した空間」と話すのは、温泉療養システム研究会会長で医師の植田理彦さん。入浴中のエクササイズのメリットは、いくつかあるという。
まずは、温かいお湯につかる「温熱効果」。入浴中は全身の血行が良くなり、脂肪の燃焼が促進されるのは、よく知られていること。そこに適度な運動を加えれば、さらに、効果が期待できるという。
水の力が運動の効果を高めてくれることも見逃せない。水圧が、血管やリンパ管を圧縮。血液などの流れが良くなることで、脂肪の燃焼が促される。お風呂につかると浮力で体重が軽くなることから、関節などに負担をかけず運動ができる。一方、水の抵抗を受けながら体を動かすので、普段は使わない筋肉にも、刺激が与えられる。
浴槽内という狭い空間だから大きな動作は難しいが、スポーツクラブのプールなどで行うアクアビクスと原理は同じといえそう。さらにお湯にゆっくりつかって体を温めれば、疲れや肩のこりなども取れやすい。
情報サイト「オールアバウト」のガイドで、ダイエットに詳しい河口哲也さんは「ほぼ毎日入るお風呂だから、トレーニングを習慣にしやすい」と話す。運動用のウエアに着替えたり、器具を用意したりする必要もない。誰にでも始めやすく、続けやすい点が、お風呂でのトレーニングの魅力でもある。
具体的なトレーニング方法として河口さんは、「小さな動きをゆっくり繰り返す、筋力トレーニングがおすすめ」という。狭い浴槽の中では、動きも限られるから、コツをつかむことが大切だ。
太りにくくやせやすい体質を作るために効果が高いのは、体の中の大きな筋肉をトレーニングすること。まずはおなか、脚、背中、胸などの筋トレを取り入れよう。動作は座った姿勢での曲げ伸ばしが中心。特に「おなかは最も効果が出やすいところ」(河口さん)。イラストにあるおなかのトレーニングのほか、同じ姿勢から、つま先を上に上げて体をVの字に近い状態にする方法もある。
ポイントは、ひとつひとつの動作をゆっくり時間をかけて行うこと。体への負荷が大きくなると、効果が高まるからだ。「流行のピラティスのような、スロートレーニングをイメージして」(河口さん)とアドバイスする。
河口さんは、脱衣場などに大きめの鏡を置いて、自分の体を常にチェックすることを勧める。「体のたるみや、逆に運動で引き締まった部分が確認できればトレーニングの励みになる」
ただ、お風呂は普通に入るだけでも、思った以上に体力を使っている。激しい運動は事故につながりかねない。がんばりすぎては体に負担がかかる。浴室の環境や、運動の仕方に注意も必要だ。
最も気をつけたいのがお湯の温度だ。植田さんによると、夏は38−40度、冬は39度−41度とぬるめに設定する。熱いお湯でだらだら汗をかく方が効果がありそうに思えるが、「湯疲れしてしまい、体に良くない」という。じんわり汗ばむ程度で十分。汗をかいたら運動を中止して、いったん休もう。
転倒しやすい浴槽の外での運動はなるべく避け、姿勢が安定する浴槽内で座って行うのが基本だ。入浴後の水分補給はしっかりと。冷やした水より、ぬるめのお茶や常温の水などのほうが、体を冷やさない。冬は温かい室内と浴室の急激な温度差が体に負担になる。入浴前に浴室の壁にお湯のシャワーをかけ、浴室を暖めておくと良い。
30分程度の入浴で、ジョギング15分程度のエネルギーを消費するとされる。ゆったりお湯につかりながら無理せず少しずつ、トレーニングを取り入れよう。疲れない程度に続けて、毎日の習慣にしよう。
お風呂でできる筋力トレーニング |
おなか
ひざを曲げて座り、浴槽のふちを腕でおさえ、体を安定させる
両ひざをV字型に胸にひきよせる。その姿勢をキープし、元に戻す。それぞれの動作を3秒程度かけて行う(1往復×10回程度)
胸
胸の前で手のひらを合わせ、合掌のポーズ、両側から強く押して8秒程度キープする(5回)
背中
両腕を浴槽に押しつける。外に開くようなイメージで手首の辺りに力を込め、10秒程度キープする(5−10回)
(注)河口哲也さんの話を基に作成
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お風呂で筋トレする際の注意点 |
・お湯の温度は38度から41度とぬるめに |
・食後、飲酒後のトレーニングは控える |
・浴槽の中で座ってできる動作が安全 |
・疲れたら途中で浴槽を出て休憩を |
・お風呂から上がったら、水分と休息を十分取って |
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