倦怠(けんたい)感や食欲不振が続いていませんか。暑い夏の間にたまった疲れは、足からほぐすのが効果的。香りも楽しめる手作りの湿布やお灸(きゅう)を上手に使うと、血行がよくなり、自律神経のバランスも正常に。元気は自然と戻ってくるだろう。
8月28日、愛・地球博(愛知万博)で植物パワーを紹介するイベントが開かれた。日本ではまだなじみの薄い植物療法士の肩書をもつ森田敦子氏は、シラカバの精油と市販の粘土を利用した誰でも簡単にできる湿布を披露、その効能を説いた。「足に塗って約20分間そのままにしておくと、むくみがスッと引いて疲れがほぐれます」
夏の疲れや体調不良の多くは冷房による体の冷えが原因だ。なかでも足は、焼け付いたアスファルト路面の熱気とクーラーの冷気に繰り返しさらされ、特に血行が悪くなって疲れがたまりやすい。
「夏の疲れ解消には、血行を改善してむくみをとることが何よりも大事」と森田氏。
自家製湿布は「モンモリオナイト」と呼ぶ粘土の粉と、「スイートアーモンドオイル」などのマッサージ用植物油、それにシラカバ精油から作る。どれも百貨店などのアロマセラピー関連商品を扱う売り場や通信販売で簡単に手に入る。
1回分の材料費は500円前後。粘土の粉30グラムに水15ミリリットルを混ぜてよくこねる。固めのマヨネーズ状になったところで、あらかじめシラカバ精油を5滴たらしておいた植物油5ミリリットルを混ぜて練り合わせれば完成だ。
シラカバ精油の成分のほとんどは、頭痛薬や湿布薬に使う「サリチル酸メチル」と呼ぶ物質だ。作った粘土を両足のすねやふくらはぎ、足の裏に塗ると、サリチル酸メチルが体内に吸収されて血行が改善する。植物油や粘土中のミネラル成分などの働きで市販の湿布薬より成分の吸収が速い。15−20分塗っておくだけでよく、水で洗い流した後も効果が持続し、むくみが軽減する。
もし余っても密閉して冷蔵庫へ入れれば、1週間は保存できるという。
植物療法をさらに手軽に楽しみたいなら、ハーブ風呂もお勧めだ。みかんの皮を乾燥させた「陳皮」は体を温めて発汗を促すが、同様の効果をもつショウガやヨモギ、シナモンなどを組み合わせるとより効果的だ。陳皮と他の薬草1種類を5グラムずつティーバッグなどに入れて浴そうに浮かべるだけでいい。
面倒でないならティーバッグを鍋などに入れ約20分間沸騰させ、煮出したエキスを使うと効果がより高まる。エキスも3日程度、冷蔵庫保存が効くという。
入浴の効能に詳しい中伊豆温泉病院(静岡県伊豆市)の山本竜隆内科医長は、「風呂にゆっくりつかって体を温めると、冷房などによって働きが乱れた自律神経がほどよく刺激されて、血流が改善する。自律神経のバランスが崩れたままだと、胃腸機能も低下し元気がなくなる。植物成分などを活用して早めに治した方がいい」とアドバイスする。
「自律神経を刺激するには昔ながらのお灸を活用する手もある」と足の健康に詳しい統合医療ビレッジ(東京・千代田)の市野さおり看護部長は語る。
市販のお灸には、シールで簡単に貼り付けられるタイプがある。足の裏やくるぶしの周辺のツボに張って火をつけると内部のモグサが燃え、ツボを介して熱で自律神経が刺激される。4分程度で暖かさを感じ、最後に少し熱くなったところで火が消える。熱さの感じ方は人それぞれ。途中で熱いと思ったら我慢せずに火が消える前にはがしても構わない。その場合、同じ場所で熱さを感じるまで、2、3個のお灸を据えればいい。
ツボは足裏などを指で押し、痛みや気持ちよさを感じる部分にある。「施灸図」=イラスト=が参考になるが、個人差があるので、ツボ探しは自分の感覚を大事にするのがポイントだ。
お灸には温熱効果だけでなく、ヨモギの成分が体に染み込んで免疫力を向上させたり、煙に含まれる香りの成分によるリラックス効果もある。市野看護部長は「テレビを見たり本を読んだりしながら気軽に楽しめる。秋の夜長の友にもなりますよ」と勧めている。
三陰交(さんいんこう、内くるぶしから指4本上)
太谿(たいけい、内くるぶしとアキレスけんの間のくぼみ)
照海(しょうかい、内くるぶしの下指1本)
湧泉(ゆうせん、足裏中央上のくぼみ)
失眠(しつみん、かかと中央)
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