毎日食べ腸内フローラ改善
ゆっくり減量効果

たんぱく質やカルシウム、ビタミンなどを含むヨーグルト。発酵源の乳酸菌によって腸のフローラ(細菌叢=そう)を整え、健康増進に効果がある。最近はカルシウム強化タイプや肌によいとされる機能性成分を加味したものなど製品は多彩。健康面で効果的な食べ方を探った。

「お昼時は若い女性のグループがよく来ますね。ヨーグルトサラダなどが人気があります」

東京・渋谷区元代々木の、バラの香水などブルガリアの商品を輸入しているヨーグルトサン商事。マネジャーのカタージェフ・ティホミールさんが併設している喫茶室でこう語る。

在日15年になるカタージェフさんは、「酸味を少し弱くするといった日本人向けの味にしていませんが、スターター(種菌)はいろんな種類がありますから、どんな要望にも応えられます」とも付け加える。

大相撲で琴欧州が活躍したこともあって、ブルガリアに関心が集まっている。ブルガリアといえば名産品は何と言ってもヨーグルト。

栄養のバランスがよい牛乳を発酵してつくられるヨーグルトは、北欧諸国やバルカン半島などで古くから食べられてきた。牛乳を発酵させる乳酸菌が健康に良いとの研究が始まったのはおよそ百年前。ロシア生まれの生物学者、メチニコフやブルガリアの医学者グリゴロフによってだ。

ヨーグルトにはプロバイオティクス効果がある。プロバイオティクスとは「腸内フローラのバランスを改善し、有益な効果をもたらす」という意味の用語である。口から肛門(こうもん)までの消化管にはさまざまな細菌がいる。これをフローラというが、特に腸には多く、百兆個は下らないといわれる。

ヨーグルトは体によい細菌の活動を盛んにし、逆にアンモニアなど体にとって有害な物質をつくる細菌を抑えて腸内フローラの状態をよくする。その結果、整腸作用や便秘の改善がみられるというわけだ。動物実験などから、感染防御作用や免疫調節作用があることも知られている。

また、含まれているカルシウムによって体内での脂肪合成の減少や脂肪組織の分解が進み、いわゆるダイエット効果もあるといわれる。肌の水分量を高め、美容にもよいとの報告もある。

「発酵の際にできる乳酸や酢酸など有機酸がかもし出すにおいや味といったことが独特の食感を作っている」と明治乳業食機能科学研究所の佐々木隆部長は言う。

ただ、食品に薬と同じ即効性を期待してはならない。「腸内フローラの改善を通じてゆっくりと効果が出るから長くつきあうことが大切」と佐々木さんは付け加える。

ヨーグルトには砂糖などを一切加えない「プレーンヨーグルト」、寒天やゼラチンなどでプリン状にした「ハードヨーグルト」をはじめ、ドリンクタイプ、かき混ぜて軟らかくし果汁などを加えたソフトタイプ、アイスクリーム状のフローズンタイプに分けられる。最近では食物繊維やカルシウムを強化した商品もでている。

毎日400−500グラムとるのがよいとされるが、必ずしも量にこだわる必要はない。また、砂糖を含むものもあるので砂糖の過剰摂取に注意を。

プロバイオティクス効果は長く続かないから、ヨーグルトは毎日食べたほうがよい。時間はいつでもよいが、中でも朝食べるのがよいという。というのも、忙しい朝にぴったりの食品であるし、朝まとめて食べることは習慣化しやすいからだ。

ブルガリアの首都ソフィアの郊外にあるビストリツァ地区。退職したバトラチキさん(63)の朝はヨーグルト料理から始まる。つくるのは妻のロンツァさん。ヨーグルト入りのスープや前菜、メーンの肉料理など様々だ。

世界一のヨーグルト消費国であるブルガリアでは年間に1人が30キログラム以上をとり、日本(約5キログラム)の6倍だ。寿命では日本に負けるが「元気さでは負けないよ」とバトラチキさんは言う。
(編集委員 中村雅美)




ヨーグルト一口知識

プロバイオティクスの効果
・腸内環境改善………腸内フローラのバランスを改善
・便秘改善……………腸の運動を高め、便秘や下痢を改善
・感染防御……………ある種の乳酸菌は腸内での病原菌の増殖を抑える
・発がんリスク低減…ある種の乳酸菌は変異原物質を体外に排出
・免疫調節……………NK(ナチュラルキラー)細胞の活性を高める

食べ方
・ドレッシングやソースに使うと、エネルギーや塩分を控えめにできる
・朝まとめて食べるのがよい
・毎日食べるのが効果的
・冷凍保存すると成分組織の一部が壊れ、おいしさが半減
・酸味が気になるときは果物と一緒に食べる

(全国はっ酵乳酸菌飲料協会、明治乳業の資料から作成)



2005.10.8 日本経済新聞