腰痛や肩こりの原因にも
かかとでしっかり支える

間違った靴選びをしていませんか。放っておくと外反母趾(ぼし)など深刻な足のゆがみを招く。姿勢が悪くなり腰痛や肩こりの原因になることも。中高年だけでなく若者の間にも「足の老化」が進んでいるという。できるだけ足にあった靴を履くようにし、症状が悪化しないうちに早めに対処しよう。

神奈川県相模原市にあるF&Lワカヤマ。大人から子ども向けまで足の形に合せたコンフォートシューズ(健康靴)を扱う専門店だ。自分の足にぴったりとあった靴を選んでもらうため訪ねてみた。

ドイツにある足と靴の専門学校で足の専門医や理学療法士から指導を受けた経験をもつという若山和紀店長が対応してくれた。まず、靴を脱いで靴底の減り具合に異常や偏りがないかどうかチェック。足を手に取り、形にゆがみや魚の目、タコなどができていないか入念に調べる。

「ちょっと巻きづめの傾向があります。普段はいている靴のサイズが大きく、靴の中で足がばたついているのが原因かもしれません」
次にフットプリントと呼ぶ測定器の上に立って、足の裏にかかる体重圧のバランスを調べる。

「扁平(へんぺい)足の逆で足の甲が高すぎる状態です。足の指で踏ん張っていることが原因。土踏まずを支える形状のインソール(中底)を使うと改善するでしょう」
「靴の外側の減りが大きく、このままだとO脚が進んでしまいます。かかとの外側に持ち上げるようにパッドを入れてみましょう」

歩行時の地面からの衝撃をやわらげるため、親指から小指までの横のアーチと、つま先からかかとまでの縦のアーチがしっかりできているのが健康な足だ。くるぶしと親指の付け根、小指の付け根を結んだ三角形で体重を受け止める。老化や靴が合ってないとこのアーチが崩れ、足のゆがみや腰痛につながってしまう。

補正のポイントはアーチを整えること。足に合った中底でアーチを下から支え、縦横でアーチが崩れていれば薄いパッドを入れて調整する。

選んでもらった靴を実際に履いて歩いてみた。足の裏全体で地面をつかむような感じだ。

多くの人が足のトラブルを抱えている。幅の狭いハイヒールなどでは、つま先が左右から圧迫されて指が曲がった外反母趾(ぼし)になりやすい。靴の形や大きさに合わない靴が原因で指のアーチが崩れて扇のように広がった開帳足や魚の目、タコになることもある。

足に合わない靴を履き続けると足の指やかかとの痛みが生じる。足を引きずったり、歩幅や足を振り出す力がずれたりして、腰やひざの痛み、肩こりになることがある。「足の外科医」でもある慶応義塾大学の井口傑教授は「痛みをかばうことが、体の不調の原因になる」と指摘する。小石が靴に1個入っただけでも、腰痛の原因になることさえあるそうだ。

老化などでアーチが崩れ、足になんらかの痛みがある人はどうしたらいいのか。

足のアーチが崩れた場合、革靴なら靴を履いて立ったときに左右から少し支えられていると感じるくらいがちょうど良い。緩くて楽に感じる靴がいいわけではないという。
「アーチサポートのある靴を履けば、すぐに健康になると考えるのではなく、痛みなく歩けることで健康になると考えてほしい」(井口教授)

指の付け根が痛む人はかかとが低くて靴底が厚く、指先が合っている靴を選ぶと痛みが緩和される。かかとが痛む人はかかとが高めで、土踏まずを支える形の中底のある靴を選ぶと良い。かかとの高さの上限は男性で3センチ、女性で5センチ。どうしても痛みのひどい時は専門医の診察を受けることだ。

女性でハイヒールを履かなければならない人でもヒールの高さは5センチまでにとどめる。かかとが硬くしっかりしていることが重要だ。トゥースプリングと呼ぶつま先が上がっている靴を選ぶと、地面をしっかりけって歩けるのでよい。

仕事と通勤、アフター5に応じて履き分けられるのが望ましい。おしゃれを気にしながらも、健康な足の維持を心がけよう。(合田義孝)


靴選びのポイント

@かかとがしっかりしていること

A土踏まずを支えるような中底があること

Bつま先を圧迫しない幅と高さがあること

C必ず両足に履いて歩いて、履き心地を確かめる

D通勤用、おしゃれ用など用途にあった靴を履き分ける

Eヒールは高くても5センチ以下




2006.4.2 日本経済新聞