アスベスト(石綿)による健康被害が広がっている。石綿を含む製品の工場で働いた経験のある人や周辺に住んでいた人で、せきや息苦しさ、胸の痛みを感じることがあればすぐに専門医に診てもらおう。石綿が肺の奥深くにとどまっていると、20−40年たって発病ケースがある。

石綿を吸い込むと最初に肺の周囲をとりまく胸膜に「胸膜肥厚斑(ひこうはん)」と呼ぶ炎症が起きる。自覚症状が出にくい。この段階ではあまり心配はいらないが、横浜市立大学附属市民総合医療センターの金子猛教授は「悪性の病気にならないか、定期的に経過観察する必要がある」と話す。喫煙は肺がんに移行するリスクが高まる。

肺で酸素交換する袋などが硬くなる「石綿肺」は、息苦しさを覚えせきが出る。より怖いのはがんになってしまった場合で、肺がんのほかに胸膜のがんである「胸膜中皮腫」が代表的。手術で完全に切除するのが難しく致死率が高い。

初期の胸膜肥厚斑や小さいがんなどはレントゲンでは分からないこともある。コンピューター断層撮影装置(CT)だと見つかりやすい。


石綿被害によって起こる主な症状

病名
主な症状
胸膜肥厚斑 胸膜に炎症が起こり厚くなる。自覚症状はまれ
石綿肺 肺が線維化し硬くなる。せき、息苦しさなど
肺がん せき、たんが出て呼吸困難に。気道や肺などに痛み
胸膜中皮腫 胸膜のがん。せき、息苦しさ、焼けるような痛み、胸水



2006.4.23 日本経済新聞