歩き方や立ち居振る舞いによって、人の印象というのは大きく変わる。日常の基本動作の1つとして、意識することなく行なっていることが多い歩く動作だが、美しい歩き方を教えるウオーキング教室の人気が高まっている。
少し前までは、モデルなど特定の職業の女性が対象というイメージがあったが、最近は美しい姿勢や歩き方をマスターしたいという一般女性や、ビジネスや女性のエスコートをするときに役立てたいと講座に通う男性も増えている。
東京、渋谷のスタジオ、セルフ・コンディショニング・スタジオを訪ねた。
「心身をバランスよく自己管理する力を身につけるためのプログラムを用意しました。体の芯の筋力を鍛えるというピラティスやヨガとともに、特に女性を対象と考えたときに、とりいれたのがウオーキングです」。広報の斎藤志寿子さんは語る。入会金なしで1回から通うことができる。4回、8回、12回の中から選べるチケットもあり、その都度好きなレッスンを受講できる。
ウオーキングを教えるCHKA(チカ)さんは、ダンスやショーのプロデュースの経験を生かして、4年ほど前からウオーキングの講師を始めた。日常生活にも幅広く役立つようにと、モデルの歩き方をアレンジ。美しい姿勢、歩き方はもとより、コートの着脱の仕方やいすの座り方、階段の上り下りの仕方なども講座に取り入れている。
「最近の女性は美に対する好奇心がとても強いですね。美しく見える歩き方や立ち居振る舞いを覚えるだけでなく、人に好印象を与えられる感じのいい女性になってほしい」。CHIKAさんはこう語る。服装や靴にこだわる女性は多いが、美しさの源は自分であることに気づいてほしいと考えている。そのためには「美しい身体と心を作ることが大切」と指摘する。
この日は仕事が終わってからも通える午後8時からの講座を訪ねた。渋谷教室は20代の若い女性が多い。他に銀座と川崎でも開講しており、銀座は20代、30代の主婦、川崎はOLが多いといった具合に場所によってさまざま。
全体のレッスンは70分間。まずは15−20分程度のストレッチから入る。最初は普段の自分の歩き方をチェック。その後、音楽に合わせてゆっくりしたペースから徐々にテンポを上げてフロアを歩く。
「さあ、では背中を伸ばしていきましょう。肩甲骨を使うと自然にデコルテが開きます」「きれいに歩くことはまっすぐなボディーでまっすぐ歩くということです。無理に直線状を歩こうとしないこと」
音楽に合わせて歩きながら注意点が指摘される。三方に鏡があり、生徒は真剣な表情で鏡に映る自分の姿勢を確認している。
「かかとからゆっくりおろして」「おなかの3センチくらい下に力を入れるイメージで。おなかがつきでたり、おしりがつきでたりしないように、肩甲骨をぐっと上に引き上げる」
背中で歩くと意識することが基本。最後は各自が持ってきた履きなれた靴で歩く。モデルのようにターンやポーズをとりながら、2人ずつ何往復かする。
一場美保さん(26)は会社帰りに通えることが教室選びのポイントになったという。「自分の身体にコンプレックスがあったので、歩き方や姿勢が違えば見え方が違うのではと思って」ウオーキングに興味をもったという。事務職でパソコンに向かう時間も長いが、常に姿勢を意識するようになり、肩こりもよくなったそうだ。
ビジネスコンサルタントのオローク絵里さん(25)は気分転換にも役立てている。歩き方やちょっとした振る舞いなど、間違っていたと気づいたことも多く、自分への自信につながっているという。
「見ていて、あ、気づいたなとか、スイッチが入ったなとわかる瞬間があるんです。その瞬間に立ち会えることがうれしい」とCHIKAさんは話す。
(ライター 鈴木 寛美)
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