ヨーグルト、効果的に
整腸作用、科学的に立証


スーパーへ行くと、たくさんのヨーグルト(発酵乳)や乳酸菌飲料が並んでいる。どれも体に良さそうだが、いざ買おうとすると何がどう違うのかとまどうことも多い。健康を維持するための上手な選び方を探った。

カゴメの乳酸菌飲料「植物性乳酸ラブレ」が人気だ。2月に地域限定で発売後、3月から全国販売に踏み切ったが生産が追い付かず、4月から再び地域を縮小し、現在は関東甲信越、東北、東海北陸で販売している。9月までの売上高は「乳酸菌飲料としては異例の26億円」(カゴメ)という。

ヨーグルトなどに含まれる乳酸菌のほとんどが動物由来なのに対し、ラブレは京都の伝統漬物である酢茎(すぐき)に含まれる植物由来の乳酸菌「ラブレ菌」から作った。岡田早苗・東京農業大学教授は「植物性の乳酸菌は腸に生きたまま届く力や免疫力を高める作用が強い。おなかの調子を整える整腸作用が高い」と解説する。

乳酸菌は糖を分解して、乳酸をつくる細菌の総称で、ヨーグルトやチーズなどの乳製品や漬物、みそなど発酵食品にも多く含まれる。約250種類あるが、ヨーグルトなどに使われるのは10種類程度だ。ビフィズス菌は乳酸以外に酢酸も作り出すため、乳酸菌の仲間に分類される。

乳酸菌やビフィズス菌が健康にいいのは「1000種類、100兆個以上存在する腸内の細菌バランスを改善する、プロバイオティクス効果があるため」と理化学研究所の辨野(べんの)義己室長は説明する。

ヨーグルトには、1ミリリットルあたりに乳酸菌が1千万個以上含まれる。これを食べると乳酸菌が作る乳酸の働きで腸内が酸性に傾く。大腸菌など悪玉菌がダメージを受け、腸内環境がよくなる。大腸の細菌の8割は悪玉菌だが、腸内バランスが改善すれば、便通がよくなり炎症もおさまる。

同種類の乳酸菌でも、発酵や増殖のもとになる“種”の違いでBB536株やKW3110株など菌株がある。整調作用に大きな差はないが、菌株が違うとプラスされる健康効果が異なってくる。

例えば、明治乳業の「明治プロビオヨーグルトLG21」に含まれる乳酸菌LG21株は、胃潰瘍(かいよう)や胃がんの原因とされるピロリ菌を抑制するといわれている。

東海大学の古賀泰裕教授(感染症学)らはピロリ菌感染者100人に、LG21または普通のヨーグルトの一方を12週間食べ続けてもらう無作為比較試験を実施。胃の炎症が激しくピロリ菌が多い場合、LG21を食べると炎症改善やピロリ菌が減少する効果があることを確認した。

ほかにもLGG株はアトピー性皮膚炎や感染症予防、SP株はコレステロールの低下、KW3110株はアレルギー体質の改善などに効果がありそうなことが最近の研究でわかってきた。薬事法の制約から効能を商品に記載することはできないが、自分でインターネットなど使って調べることは可能だ。
ヨーグルトの効能で「腸の調子がよくなる」と唯一うたうことができるのが、特定保健用食品(特保)として認められた商品だ。薬の臨床試験(治験)のように、善玉菌を増やして整腸作用を高める効果が科学的に立証されており、その分、信頼性が高い。購入時の目安になる。

日本人は1日平均20グラムしかヨーグルトを食べていない。理研の辨野室長によると「理想は1日200グラム」。

食べ方だが、空腹時だと胃酸によって乳酸菌が死にやすくなり腸まできちんと届かない。朝食代わりにとるのはあまり意味がない。食後に食べるのがベストで、朝晩にカップタイプ1個ずつでちょうどよい量になる。

健康効果を引き出すには食べ続けることが何よりも大事だ。自分にあったヨーグルトを探すには味の好みに加えて、同じものを1週間食べ続けてみて、便通などの調子が良くなるものを選ぶ。便のにおいが改善されてくると腸内環境もよくなっている証拠だ。


主なヨーグルト・乳酸菌飲料の特徴

メーカーと商品名
菌の種類
特徴
特定保健用食品
の許可の有無
明治乳業
明治ブルガリアヨーグルトLB81
ブルガリア菌LB81株とサーモフィラス菌 定番。
整腸作用が高い
森永乳業
ビヒダスプレーンヨーグルト
乳酸菌BB536株とビフィズス菌 免疫力を高める効果 
グリコ乳業
おいしいカスピ海 
クレモリス菌とサーモフィラス菌 中性脂肪の上昇抑制  
ヤクルト
ソフール
ヤクルト菌L、カゼイ・シロタ株 整腸作用や免疫維持作用
小岩井乳業
KW乳酸菌ヨーグルト 
乳酸菌KW3110株  アレルギー体質改善  
日本ミルクコミュニティ
生きて届けるビフィズス菌ヨーグルト
ビフィズス菌SP株 カプセルに包んで生きたまま腸に届く  
高梨乳業
高梨ヨーグルトおなかへGG!
乳酸菌LGG株  アトピー性不敷衍の改善予防



2006.10.14 日本経済新聞