40−50代の働き盛りに発症する若年認知症。アルツハイマー病が有名だが、それとは異なるピック病という若年認知症もある。同じ行動を繰り返すのが特徴で、悪いという気持ちを抱かずに万引きなど軽犯罪を犯すこともあるという。

アルツハイマー病はアミロイドという異常たんぱく質が脳に沈着し頭頂葉などが萎縮するが、ピック病はタウというたんぱく質が前頭葉などにたまる。国内の患者数は約1万人とみられている。
ピック病では病気がある程度進行しないとアルツハイマー病のような記憶障害が出ない。代わりに同じ行為を決まった時間に繰り返したり、同じ物ばかり食べたりする。群馬県こころの健康センターの宮永和夫所長は「意欲が低下するためうつ病と間違われやすいが、悩みや不安はピック病では現れない」と言う。

根本治療はまだない。トラブルを未然に防ぐためにも、早めに精神神経科などを受診し、正確な診断をするのが重要だ。


ピック病の症状チェック
(40−70代で3個以上あれば、ピック病の疑い)
1)配慮に欠くなど状況に合わない行動をする

2)引きこもりなど自発性・意欲が低下

3)身だしなみや周囲の出来事に無関心に
4)万引きなど逸脱行為を犯すが反省もしない
5)散歩・食事・入浴などを毎日同じ時間にする
6)毎日同じ物(特に甘い物)しか食べない
7)同じ言葉を繰り返す。オウム返しをする
8)食べ物の好みが大きく変化。酒の大量摂取も
9)無口になる。語彙(ごい)の数も減る
10)最近の出来事など短期記憶は保持。日時も間違えず

宮永和夫・群馬県こころの健康センター所長作成




2007.2.4 日本経済新聞