何も食べたくない/体がだるい…
姿勢や呼吸法  押し方にコツ

じめじめした梅雨空。気温が上昇し真夏日になる日も少なくない。この時期、実は食欲不振や倦怠(けんたい)感など夏バテの症状に悩まされる人が多い。気温や湿度のめまぐるしい変化に体温調節を担う自律神経がついていけないからだ。家庭でも簡単にできるツボ刺激を覚えておくと、体の血行がよくなり疲労解消につながる。

「何となくだるい、何も食べたくないなど、体の不調は血行や胃腸の働きをコントロールしている自律神経の調整能力が崩れていることが原因だ」と新宿鍼灸(しんきゅう)柔整専門学校の西條一止校長は指摘する。夏バテにみられる不快な症状は、内臓や神経、血管、筋肉などの働きが弱まることで起こる。

自律神経は気候や生活リズムの影響を受けやすい。
冷房の利いた屋内と屋外を出たり入ったり繰り返すと、自律神経のバランスが崩れ体調不良を招く。体温調節がうまく機能するのは温度差でせいぜい5度程度までといわれる。

睡眠時、交感神経より副交感神経が優位に働き、人はリラックスした状態になる。暑くて寝苦しいと交感神経の働きが収まらずになかなか寝付けず、じわじわと自律神経のバランスが崩れてくる。
なぜツボ刺激が自律神経の働きを正常な状態に戻し、体調の改善に効果があるのだろうか。

人間総合科学大学の佐藤優子教授は「皮膚表面にある神経は、血管や内臓の神経につながっている」と解説する。皮膚を押すと刺激が感覚神経から経路と呼ぶ連絡路を通じて脊髄(せきずい)や脳の神経にたどり着く。ツボ刺激で血管が拡張した体温を高めり、痛みを減らしたりできる。

ツボ刺激で狙った効果を引き出すには、姿勢、呼吸法、押し方がポイントになる。朝起きたときや仕事前に元気を出したいときは、座った状態でツボを刺激し交感神経を高める。睡眠前などリラックスしたいのなら、副交感神経の働きが高まる寝た状態でツボを押すとよい。疲労回復や胃腸の改善などには、息をゆっくりと吐きながら刺激するようにしよう。

ツボ刺激の基本となるのが4つのステップだ。
まず手首にある「外関」と呼ぶツボを押す。血行を良くし新陳代謝を高める効果がある。調子の悪い場所が体の上半身にある場合は、手の人さし指と親指の間にある「合谷」、下半身なら足のくるぶしから指3本分の上の部分にある「三陰交」両方を刺激する。

こうした基本のツボを刺激したあとで、夏バテ解消など目的に合わせたツボ刺激をする。最後にもう一度「外関」を刺激して締めくくる。

サインペンやゴルフボールなどの道具を使うと力をかけずに刺激できる。背中のツボを押すには、靴下を巻いたほうきなどを使おう。

持病にぜんそくがある人は、発作を誘発することもある。妊娠中の人だと、ツボによっては子宮を収縮させてしまう。風邪などで熱があると、体の炎症を悪化させかねない。こうした人たちはツボ刺激には向かない。
(合田義孝)


ツボ刺激の4ステップ

1.「外関」
左右どちらかを息を吐きながら手のひらで1分間さする
2.「合谷」
手の甲の親指と人さし指の間を反対の手の親指でぐっと強く片手30秒ずつ押す
3.症状に応じてツボを刺激する
「三陰交」 内くるぶしから指3本上をもみほぐす
4.もう一度「外関」をさする

2006.7.9 日本経済新聞