かかず、原因見極め
休暇疲れ、じんましんも


陽光が強まるにつれ、汗をかき湿疹(しっしん)やかゆみなど、肌のトラブルが気になり始める。無意識に患部をかいてしまうことも多いが、かくことで症状を悪化させると、後々まで肌に跡が残るトラブルになりかねない。湿疹やかゆみは、原因が簡単に推測できるものが多いので、正しい予防策と対応が大切だ。

【衣類やストッキングに原因】
夏の湿疹の代表は、汗を誘因として、かゆみを伴う赤いぶつぶつが表れる接触皮膚炎だ。野村皮膚科医院の野村有子院長は、オフィスで働く女性の場合「ナイロン製の制服やジャケットの襟元、袖口が肌に直接触れてかゆみが生じることが多い」と指摘する。衣類ではこのほか、レースの下着やストッキングが原因になることが多い。

湿疹の原因が制服の場合、下にTシャツなどを着れば湿疹を防げる。Tシャツの袖口や襟元の縁に使っているナイロン糸に反応する人もいるが、裏返しに着れば糸が触れる面積を減らせる。ストッキングが原因ならメッシュ編みや、縦と横の糸種を変え通気性を高めた製品や少々高価だがシルク製を使うといい。

汗を半日ほど放置しておくとアンモニアに変化し、かゆみの原因となる。ナイロン製のストッキングは汗をためやすいので、「可能なら休憩時間にぬれタオルで汗をかいた部分をふいたり、ストッキングを交換したりすれば万全」(野村さん)と話す。

【アクセサリーで金属アレルギー】

次に金属アレルギーがあげられる。これも接触皮膚炎の一種で、ネックレスや指輪、ピアスなどのアクセサリー類、下着の金具、ジーンズのボタン、腕時計のベルトなどが原因になる。腕時計のベルトが皮革製でも、なめすためクロムを使うことがあり、金属アレルギー反応が起きることがある。対策は「身につけるのを避けるしかない」(野村さん)。装身具でなくてもカミソリやシェーバーが原因の場合もある。

夏の肌のトラブルの第3の原因は日光過敏症だ。腕や胸を露出するようになると、ふだんは隠れた部位に紫外線が当たってかゆくなる。色白の人に多い症状で予防策は袖の丈を徐々に短くすることや、日焼け止めの活用など。

「高血圧や高コレステロールを調整する薬を飲むと、副作用で皮膚が紫外線に弱くなる場合がある」(野村さん)。気になるなら医師などに確認するといい。

【1、2時間様子を見る必要も】

疲労からくるじんましんがかゆみの原因になることもある。特に夏休みの旅行中に目立ち、宿に着いたとたんに急激なかゆみがでる。あわてて医者に駆け込むと、診療するころには治まっていることがある。急に出たじんましんが体全体でなく手足程度なら、涼しい場所で体を冷やして1、2時間様子を見るのがいいだろう。ただし顔が腫れた、息が苦しい、口やのど、目がかゆいなどの症状は医者に急いだ方がいい。

一方「直接的な対策も大事だが、生活習慣を変えることでもかゆみを抑えられる」と話すのはニュー上田クリニックの上田由紀子院長。

まずやめたいのは患部をかくこと。かゆさが増幅されるので、ぬれタオルや保冷剤で患部を冷やすと、かゆみが治まることが多い。

【風呂から出たら素早く手入れ】
次に注意したいのは風呂の温度。42度を超える熱い風呂に入ると皮膚の細胞間脂質が失われて乾燥が増長され、かゆみが増す。38−40度に抑えた方がいい。

体は顔に比べて汚れが少ないので、強く洗う必要はない。ナイロンタオルで、肌を強くこするのはかゆみを増すことになる。綿タオルにせっけんを泡立てて洗い、きちんと洗い流す。入浴で肌に水分を蓄えても体をぬれたままにしておくと、元々あった水分といっしょに蒸発し、入浴前より乾燥するので、十分以内を目安に体をふき、ローションなどで保湿をこころがける。

夜間、眠っているときに無意識に患部をかきむしってしまうことがある。直接さわれないよう患部を保護したり、つめを短く切っておいたりするといい。


夏の湿疹・かゆみの原因と対策

・ナイロン製のジャケット、ストッキング、レースの下着
→直接肌に触れないようにする。着用しない。通気性の高いものにする

・アクセサリー類による金属アレルギー
→着用しない。ピアスにはかゆくならないチタン製がある

・岩盤浴、ホットヨガ、スポーツ
→汗をかいたらすぐに洗い流す

・直射日光、紫外線
→日焼け止めクリームを塗る。肌を徐々に慣らす

・せっけん類
→刺激の弱いものを使う。きちんと洗い流す

かゆみを抑える方法


■風呂の温度は38−40℃程度にする
■ナイロン製のタオルは使わない
■風呂上りにぬれたままでいない
■化粧水や乳液で肌の保湿を心がける
■ぬれタオルや保冷剤で患部を冷やす
■服用している薬の種類によっては肌が紫外線に弱くなる副作用に注意
■ストレスや疲れをためない

(上田由紀子院長と野村有子院長の話から作成)





2006.7.29 日本経済新聞