普段何気なく使っている目薬だが、使用法を誤ると効果は薄れてしまう。種類もいろいろあり、医師や薬剤師らと相談し、目的にあったものを選ぶことが大切。知っているようで知らない目薬の基本をマスターしよう。
「誰でも簡単にさせると思っているが、正しく使えている人は少ない」こう話すのは両国眼科クリニック(東京・墨田)の石岡みさき院長。目薬にも当然、使用方法や用量が書かれた説明書が添付されているが、あまりにも身近なためじっくり読んだことがある人は少ないだろう。
正しい目薬の使い方を紹介しよう。
まず、使用前にせっけんを使ってしっかり手を洗うこと。手に汚れや細菌がついたままだと目の結膜や角膜が炎症を引き起こす原因になる。さし方の基本は顔を真上に向け、目薬をもっていない方の人さし指で下まぶたを軽く引き下げ、あかんべえ状態に。目薬の容器がまつげやまぶたに触れないように点眼する。さした後は1分程度、軽く目頭を押さえ、じっと目を閉じておくのが効果的だ。
人間の目は1−2滴で十分で、何滴も点眼する必要はない。多くさしても目からあふれたり、涙小管という細い管を通って鼻からのどへ流れ出たりするだけだ。さした後に何度もまばたきする光景をよくみかけるが、これもよくない。「涙が分泌されてあっという間に鼻・のどに薬が流れてしまう」とロート製薬の薬剤師、矢野絢子氏は説明する。目の真ん中の黒目部分にささなくてもよいという。
高齢になると手が震え薬がうまく目に入らなかったり、容器を上手に押せず何滴も押し出してしまったりすることも。こんな時役立つのが点眼の補助器具。いくつかの種類があり、プラスチック製の丸型容器で真ん中に目薬容器を差し込み目にかぶせて使うタイプなら千円以下で手に入る。
石岡院長が進めるのが、げんこつの形にした手を顔にくっつけて、容器を持った手をその手に重ねるように点眼する方法。これを試した通院女性は「不器用でなかなかうまくさせなかったが、こんなに簡単にできるとは」と驚いていた。
いくつかの目薬を使う場合は、最低5分間は時間を置くようにしよう。昔は寝る前の点眼をさけるよう注意されることもあったが、今は就寝前に使用しても問題ない。
目薬は「複合タイプ」「人工涙液タイプ」「抗菌タイプ」などに分類される。薬局などで購入する際は、薬剤師に症状をきちんと説明し、適切なものを選ぼう。
最も一般的な複合タイプは目の疲れに有効な複数の成分が含まれている。血管収縮を促す薬剤もその1つで、パソコンなど長時間向き合ったあとの充血解消に効果的だが、「長期にわたって使いすぎると、逆に血管が収縮しなくなって充血がとれなくなることもある」(石岡院長)。1日5−6回など用法・用量をきちんと守りたい。
また、防腐剤が入っているケースが多く細菌の繁殖などを抑えるには有効だが、「防腐剤も目に入るため、アレルギーが起きたり、炎症が強くなったりするケースも少なくない」と東京大学付属病院眼科・視覚矯正科の臼井智彦助手は忠告する。
「目薬は爽快(そうかい)感があるからつい使う」という人も多いだろう。メントールと呼ぶ成分などが含まれているためだが、これ自体に薬効はない。処方の目薬はメントールが入っていないので物足りないと思うかもしれないが誤解がないように。
カップ型の容器で目を洗う洗眼液が最近は人気だ。ただ、使い方が難しく、目を守る様々な働きをしてくれる涙を押し流し、まつげなど目の回りにある汚れを目の中に入れてしまう恐れもある。「洗眼液と目薬は違う。基本的には目洗いは不要」と指摘する専門家は少なくない。
ついうっかりしてしまうのが使用期限切れ。外箱などに記載されているのは未開封時の期限だ。一度開封したら1−2カ月を目安に使い切る。使い続けると細菌などが繁殖する可能性も出てくる。家族の間で使い回しするのも避ける。細菌が原因の目の病気だとうつるかもしれないからだ。
(長谷川章)
1 手を石鹸で丁寧に洗う。すすぎもしっかり |
2 顔を真上に向け、手で下まぶたを軽く引き下げ「あかんべえ」 |
3 目薬の容器の先がまつげやまぶたに触れないように気をつけて、決められた分量をさす |
4 さした後は1分程度軽く目頭を押さえ目を閉じる。目薬が目のふちや皮膚についたらティッシュなどでふきとる |
・容器に記載されている使用期限は開封前のもの。開封後は1〜2カ月を目安に |
・他人には貸さない |
・水虫薬などを間違って目にささないよう注意 |
・使用後はしっかりふたをする |
・指示がなければ冷蔵庫などで保管する必要はないが、直射日光のあたらない涼しい場所で保管する |
・目薬をさした後に目がかゆくなったり痛くなったりしたら、使うのをやめ医師に相談する |
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