がん、動脈硬化の治療法開発に光  熊本大学

がんや動脈硬化、老化などの原因と言われる活性酸素を減らす物質が体内で作られるメカニズムを、熊本大学大学院医学薬学研究部の赤池孝章教授らのグループが明らかにした。研究が進めば、がんの予防・治療などへの応用につながりそうだ。英科学誌「ネイチャー・ケミカルバイオロジー」11月号に紹介された。

赤池教授らは、体内で作られ、血管拡張などの働きを持つ「環状グアノシン1リン酸(cGMP)」という物質が、一酸化窒素と結び付くと、ニトロ化環状グアノシン1リン酸(8-ニトロcGMP)という新しい物質になることを発見。この物質も血管拡張の働きを持つが、その効果はcGMPの約100倍に達した。さらに8-ニトロcGMPが細胞内のある種のたんぱく質と結びつくと、活性酸素を減らす酵素をたくさん作り出すことも明らかにした。活性酸素は、たばこやアルコール、油の取り過ぎなどで多く発生するといわれ、動脈硬化やがんなどの原因の一つとされている。

98年にはcGMPの働きなどを明らかにした米国の研究者ら3人がノーベル医学・生理学賞を受賞しているが、8-ニトロcGMPの存在や、その働きまではわかっていなかった。

東北大学大学院医学系研究科の下川宏明教授(循環器病態学)は赤池教授らの研究について「がんや動脈硬化などの治療法の開発に結びつく可能性があり、非常に素晴らしい研究だ」と話している。
【伊藤奈々恵】

2007.11.27 記事参考 毎日新聞社