Million Women Studyによれば、英国在住の中高年女性におけるあらゆる新規癌の約5%が体重超過または肥満に起因する可能性があるという
Roxanne Nelso
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英国女性に関するコホート研究であるMillion Women Studyを実施した研究者によれば、体格指数(BMI)の上昇は、特定の種類の癌のリスクの有意な上昇と関連があるという。英国在住の閉経後女性では、あらゆる癌の5%が過剰な体重に関連があるという研究結果が11月7日付けの『BMJ』のOnline First号に公表されている。この集団における全症例のおよそ半数が体重超過または肥満に起因しているため、このことは特に子宮内膜癌、食道の腺癌にあてはまる。
米国癌協会(ジョージア州アトランタ)のEugenia E. Calle, PhDは付随する論説において、脂肪過多症(全身および中心型の両方)は数々の癌のリスク上昇に関連があることを示唆する観察的証拠がすでにかなり多く存在すると指摘する。
「肥満と癌リスクとを関連付けるメカニズムについての最も強力な経験的根拠には、肥満が代謝および内分泌に及ぼす影響や、これによって生じるペプチドおよびステロイドホルモンの産生の変化がある」とCalle博士は記述している。「世界的な肥満の蔓延はおさまる兆しがみられないため、肥満が腫瘍の形成と進展に関与する機序に関する知識とともに、このプロセスに介入する新しいアプローチが早急に必要とされている」
オックスフォード大学(英国)の癌疫学部門(Cancer Epidemiology Unit)の統計疫学専門家であるGillian Reeves, PhDらは、Million Women Studyに参加した年齢50潤オ64歳の英国人女性120万人においてBMIと癌の関連を評価した。研究者らは、国家統計によれば、現在、英国の全女性の23%が肥満であり、また34%が体重超過であると指摘している。
この研究において、Reeves博士らは、BMI別にあらゆる癌について、また17種類の特定の癌についての発症と死亡の相対リスク(RRs)を算定した。次にデータを多数の交絡因子(年齢、地域、社会経済的地位、初産年齢、経産歴、喫煙、飲酒、身体活動度、閉経後の年数、ホルモン補充療法の使用状況)について調整した。
癌発症についての平均追跡調査期間は5.4年であり、この間に45,037件の新規の癌が発症した。癌関連死亡についての平均追跡調査期間は7.0年であり、この間に17,203件の癌関連死亡があった。
高いBMIの女性は社会経済的階級が低い傾向があり、低いBMIの女性に比べて子供の数が多く、喫煙率、飲酒率、ホルモン補充療法使用率も低いことが明らかになった。しかし、交絡因子についてデータを調整すると、BMI増加は閉経後女性における子宮内膜癌、食道の腺癌、腎臓癌、白血病、多発性骨髄腫、膵臓癌、非ホジキンリンパ腫、卵巣癌、乳癌および閉経前女性における結腸直腸癌の高い発症率に関連があることがわかった。
閉経状態によって癌のリスクにはかなりの差があったと研究者らは指摘する。子宮内膜癌については、閉経前、閉経後のいずれの女性もBMI増加に伴いリスクが有意に上昇したが、リスクは閉経後女性の方がはるかに大きかった。結腸直腸癌および悪性黒色腫については、閉経前女性においてBMI増加に伴うリスクの上昇傾向が認められた。閉経前女性では、高BMIは低い乳癌リスクに関連があったが、閉経後女性では高BMIによってリスクが上昇した。
本分析の結果、BMIと食道の扁平上皮癌および肺癌との有意な逆相関も明らかになった。BMIとがん関連死亡との関連は、BMIと癌発症との関連とほぼ同様であった。
「要約すると、この知見は英国の閉経後女性における年間6000件の新規の癌は、体重超過または肥満が原因であり、このうち4800件は肥満が原因であることを意味するものである」と本研究の著者らは結論する。
Million Women StudyはCancer Research United Kingdom、UK Medical Research Council、UK National Health Service Breast Screening Programmeの支援を受けた。本研究の著者らの情報公開によれば、関連する金銭的関係はないという。
Calle博士の情報公開によれば、関連する金銭的関係はないという。
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