T細胞の強力な活性化の結果生じるリンパ管外のウイルス避難場所


そのウイルスに特異的効果あるT細胞移入を行なって活性化しても、
その中和抗体減少を伴い活性化した免疫作用でも、臓器の解剖学的型態や
適応する免疫エフェクター機構の違いにより、腎臓などリンパ管外の臓器にウイルスが検出され残留する。





ヘルパーT細胞は、マウスリンパ球性脈絡髄膜炎ウイルス(LCMV)、サイトメガロウイルス、C型肝炎ウイルス、HIVなどの持続感染性ウイルスに対処するCD8+T細胞の働きを助ける。これらのウイルスは完全な排除がむずかしいことが多く、腎臓やその他のリンパ管外臓器のような避難場所(sanctuary site)に検出可能な量が残留する。この持続感染の原因となる機序はよく解明されていない。

今回我々は、ウイルス特異的な強力なT細胞応答を示すマウスでは、中和抗体の量が減少しており、中和抗体産生が遅延することを示す。こうしたマウスはリンパ管外の上皮からLCMVを除去できない。ウイルス特異的なB細胞を移入すると持続的感染部位からウイルスが一掃されたが、ウイルス特異的なT細胞移入では排除できなかった。腎臓からのウイルスの排除は、腎臓に浸潤するB細胞によって生成されると考えられるIgGの間質部分への蓄積と関連していた。

ウイルスが除去されなかったマウス腎臓のCD8+T細胞は、活性化されたが疲弊が認められた。以上より、この感染モデルでは、ウイルス特異的な中和抗体の減少を伴う強力な免疫活性化が生じた結果、部位特異的なウイルス残存が起こると結論される。今回の結果から、ウイルス避難場所の形成は、臓器の解剖学的形態と、どのような適応免疫エフェクター機構が誘導されるかの両方に左右されると考えられる。T細胞応答を増強するだけでは、ウイルス残存は解消できないだろう。