肥満指数が高いと、一般的癌だけでなく稀な癌のリスクも上昇することが判明した。
Salynn Boyles
WebMD Medical News体重超過あるいは肥満の人は、一般的癌だけでなくあまり一般的でない癌を発症するリスクも高いことが解析で判明した。
これは282,000名以上のデータを含むデータセット200以上を合わせて行われたもので、15の発癌部位で体重の影響が検討された。
体重増加は、男性および女性の食道癌、女性の子宮内膜癌および胆のう癌のリスク増加と最も強く関連した。
女性の閉経後乳癌、男性の大腸癌、男性および女性の血液がんなど比較的多い癌と、体重超過との関連性は中程度であった。
しかし、男性の前立腺癌、女性の閉経前乳癌および卵巣癌、男性および女性の肺癌のリスク増加とは関連しなかった。
解析結果は2月16日発行の『Lancet』に掲載される。
「一般的癌と稀な癌の両方で関連性が認められ、驚いている」と研究者のAndrew G. Renehan, PhDはWebMDに話す。「男性と女性では部位によって[肥満関連
の]リスクに明らかな差があることも分かった」。
BMIと癌のリスク
マンチェスター大学(イギリス)のRenehan博士らは、これらの研究からリスクを評価するために肥満指数(BMI)を使用した。
BMIは、身長と体重に基づいた太り過ぎの数値尺度である。BMIが18.5潤オ25未満であれば標準体重とされ、25潤オ30未満は体重超過であるが肥満ではない。BMIが30以上の人は肥満と判定される。
例えば身長170cmで体重が72kg、86kg、102kgだとしたら、BMIはそれぞれ25、30、35となる。
男性も女性も、BMIが5ポイント増加するごとに食道線癌の相対リスクがおよそ50%増加した。食道線癌は米国ではまだ比較的少ないが、増加傾向にある。
このほか、以下のようなことが解析で明らかになった。
* 女性の場合、BMIが5ポイント増加するごとに子宮内膜(子宮)癌のリスクがおよそ60%増加した。昨年米国で新たに見つかった子宮癌は約39,000例にのぼり、7,400例が死亡したと推定される。
* 体重超過および肥満と大腸癌の関係は、女性より男性の方が強かった。BMIが5ポイント増加するごとに、男性の相対リスクは24%、女性の相対リスクは9%増加した。
* 男性に比べて女性では体重超過が胆のう癌の強い危険因子となり、BMIが5ポイント増加するごとに、女性の相対リスクは59%増加したが、男性の相対リスク増加は有意ではなかった。胆のう癌はまれな疾患で、昨年米国で新たに診断された症例は約9,000と少ない。
* BMIが5ポイント増加するごとに女性の閉経後乳癌のリスクが12%増加したが、閉経前のリスク増加はみられなかった。
* 男女とも、BMIの上昇によって白血病、多発性骨髄腫、非ホジキンリンパ腫などの血液がんのリスクが中程度増加した。
将来のリスクを推計する
体重との関係で癌のリスクを計算できれば、人口高齢化と肥満増加が今後数十年間に与える癌発生率への影響を公的に推計しやすくなるだろう、とRenehan博士は言う。
ストックホルムカロリンスカ研究所の栄養疫学者Susanna
Larsson, PhDは、人々が健康的な体重を維持できるよう、地域レベルでもっと手助けする必要があることをこの解析は明らかに示した、とWebMDに話す。
しかし「この問題に対処するため、どのような取り組みをすべきかは見えていない」とLarsson博士は言う。
米国癌協会(American Cancer Society)の疫学者、Michael Thun, MD, MSはこれに同意する。
「体重が簡単に落とせるなら落としているだろう」とThun博士はWebMDに話す。「しかし現実には、私たちの社会的、物理的環境の中に太る原因になるものがたくさんある。食べ物はどこにでもあるし、生活に身体活動はもはや組み込まれていない。ほとんどの人にとって、運動は自発的にやるものである」。
意識は高まってきているが、大半の人は体重超過や肥満によって癌になる率が高くなることを知らない、とThun博士は言う。
「肥満が心臓疾患と糖尿病に関係することは知られているが、肥満は癌のリスクに関連すると知ったら、普通の人はやはり驚くだろう」。
Renehan, A.G. The Lancet., Feb. 16, 2008; vol 371: pp 569-578.
Andrew G. Renehan, PhD, department of surgery, School of Cancer Studies, University of Manchester, England.
Susanna C. Larsson, PhD, division of nutritional epidemiology, National Institute of Environmental Medicine, Karolinska Institutet, Stockholm, Sweden.
Michael J. Thun, MD, MS, vice president of epidemiology
and surveillance research, American Cancer Society, Atlanta.
National Cancer Institute web site.
American Cancer Society web site.
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