日本のタラソ治療

タラソテラピー(海洋療法) 海の力に癒やされ 海水、海藻で運動、施療 力抜け、ゆったり

海の恵みであるミネラル豊富な海水と、きれいな空気を健康増進に活用するタラソテラピー(海洋療法)。心身のコンディションを整えるだけでなく、欧米では治療で用いられることもあるという。千葉県勝浦市にある総合施設「テルムマランパシフィーク」を記者が訪ね、その効用を体験した。【石塚淳子】

タラソテラピーは一言で言うと、海辺の自然環境の中で、海水や海藻を利用した運動や施療を行う自然療法の一種。施療は温海水プールでの水圧によるマッサージや浮遊、ジャグジーをはじめ、海藻・海泥パックなどさまざまだ。数日滞在するのが理想だというが、今回は4月から始まる日帰りの「アンチストレス」というプログラムを体験した。

このプログラムは、ストレスからくる不眠や肩こり、目の疲れに有効だそうだ。内容は(1)温海水プールの中を歩いたり、ジェットの水圧でマッサージする「アクアトニック」(2)プールに体の力を抜いて浮かぶ「ピシーナリラクゼーション」(3)海藻のペーストで全身をパックする「アルゴパック」--の3種類。

ヘルスチェックの用紙に記入し、血圧を測定。水着に着替え、アクアトニックのためプールへ。400平方メートルの大プールは、ウオーキングや足、腰などへのジェットマッサージ、ノズルから落下する海水で肩や首をほぐすなど、13のゾーンに分かれている。海水温度は33潤オ36度と場所で異なる。運動に加え、温度が違う場所を行き来することで血行が促進されるという。

屋外に設置された泡が出るジャグジーバスは開放感があり、海の空気がおいしい。浅いプールで横たわったまま足の裏にジェットを受けるデッキチェアバスは、そのまま眠ってしまいたい気分になった。プール近くには昼寝ができるリラクゼーションルームも。「休養を取るのもタラソテラピーの大切な要素です」と受け付け時に言われていたのを思い出した。

アクアトニックを約1時間行い、次は30分のピシーナリラクゼーション。1・5メートルほどの細長い丸太形の浮き具に頭を乗せ、浮き具の握り手をつかんでプールに浮く。担当セラピストの指導に従って、目を閉じたままゆっくりと脚を曲げ伸ばししたり、上体を左右に揺らしたり。手を離し、足も同じ浮き具に乗せて体重を海水にあずける。

セラピストが私の体をゆっくりとさまざまな方向へ動かす。水の流れが腕をなで、そよ風に吹かれているような感じがする。体の力がすっかり抜けて、何ともいえないリラックス感があった。「力を抜くことで、日ごろいかに体に力が入っているか感じられます」と副支配人の藤本瞳さん(29)。

仕上げのアルゴパックは、フランス・ブルターニュ地方でとれた海藻の粉末を勝浦の海水でペースト状にしたものを使う。全身に塗り、寝袋のようなカバーにくるまれて20分。体の芯からじわっと汗が出る。シャワーでペーストを流すと、肌がしっとりしたように感じた。

食事や休養も含め約4時間ほどかけて、すべてのプログラムを終えると、たまった疲れがすっかり抜け、体がぐんと軽くなったような気分に。海のパワーのすごさを実感した一日だった。

◇独仏では保険適用

タラソテラピーに詳しい野村正・東北大名誉教授(水産増殖学)によると、タラソテラピーはギリシャ語のタラサ(海)とフランス語のテラピー(療法)をもとにした造語で、1860年代にフランス人医師によって名付けられた。

ストレス解消や睡眠の質改善、食欲増進、皮膚の保湿、体形調整のほか、関節炎や腰痛、肩こり、ぜんそく、気管支炎、アレルギー性疾患、生活習慣病の治療や予防など、さまざまな効果が認められている。欧米では医師の監督下で治療として行われ、ドイツやフランスなどでは医療保険が適用される。「海水のミネラルの構成が人間の血液や羊水と似ていることが、効果がある理由の一つと考えられている」と野村名誉教授は話す。

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■タラソテラピーを体験できる施設

テルムマランパシフィーク(http://www.thalasso.jp/tmp/index.html)の入館料は平日4200円、土日祝・特定日は5250円。アクアトニックとリラクゼーションルーム、サウナなどが自由に利用できる。プログラムの利用は別料金で予約が必要(予約センター電話03・5200・0222)。4月から「アンチストレス」(約150分、平日1万4700円、土日祝・特定日1万5750円)に加え、「アンチメタボリックシンドローム」(約180分、平日1万500円、土日祝・特定日1万1550円)、スポーツ競技者・愛好者向けの「アスリート」(約150分、平日1万2600円、土日祝・特定日1万3650円)などを新たに始める(料金はいずれも入館料込み)。テルムマランヨコハマベイ(横浜市、電話03・5200・8999)とテルムマランラグーナ(愛知県蒲郡市、電話0533・58・2888)でも同名のプログラムが始まるが、内容と料金はそれぞれ違う。

野村名誉教授によると、タラソテラピー施設は全国に16カ所以上あるが、内容や質はさまざま。日本で第1号は92年、「タラサ志摩ホテル&リゾート」(三重県鳥羽市、電話0599・32・1111)内にオープン。98年には、世界初の海洋深層水を利用したタラソテラピー施設「タラソピア」(電話076・476・9303)が富山県滑川市に開設した。


2008.3.27 記事提供 毎日新聞社