過去の喫煙も現在の喫煙もメタボリックシンドロームの危険因子であることが報告された。三井記念病院の石坂裕子氏らが3月21日のポスターセッションで発表した。
石坂氏らの研究グループは、喫煙がメタボリックシンドロームのリスクをどの程度増大させるのか、などを調べるため今回の検討を行った。
対象は、1994年から2003年までの間に三井記念病院総合検診センターを受診し、頚動脈超音波を施行、かつ、喫煙状態についてのアンケートに回答した35歳から65歳の症例。頚動脈プラークは局所的な「内膜−中膜厚」が1.3mm以上と定義した。
この間の人間ドックの受診者総数は4万6806人。うち頚動脈超音波検査を受けた人が7538人。そのうち3239人が非喫煙で、過去に喫煙の経験がある人が1822人、現在も喫煙している人が2127人だった。それぞれグループで35〜65歳を抽出すると非喫煙群は2521人、過去喫煙群は1029人、現喫煙群は1483人だった。今回の研究では、この年齢層で解析が行われた。
メタボリックシンドロームは、米国のNational Heart Lung and Blood Institute(NCEP)が定めたコレステロール教育プログラムの基準に沿って診断した。
その結果、メタボリックシンドロームと診断された人は、5033例のうち16%だった。男性は20%、女性は7%で、男性に多かった。メタボリックシンドロームの頻度は、男性の場合、非喫煙群より過去喫煙群が有意に多く(p<0.0001)、過去喫煙群より現喫煙群が有意に多かった(p<0.05)。女性も同じような傾向があったが、非喫煙群と過去喫煙群、過去喫煙群と現喫煙群のそれぞれの間では有意差がなかった。ただし、非喫煙者群より現喫煙者群の方が有意に多かった(p<0.001)。
喫煙量とメタボリックシンドロームとの関連では、過去喫煙群、現喫煙群ともタバコの本数が増えるほどに、メタボリックシンドロームのリスクが高かった。また、喫煙期間とメタボリックシンドロームとの関連では、過去喫煙群、現喫煙群とも、10〜19年あるいは20年以上で、メタボリックシンドロームのリスクが高かった。
なお、過去喫煙群で禁煙期間ごとにメタボリックシンドロームのリスクをみたところ、非喫煙を1としたオッズ比は、禁煙1年未満、禁煙1〜4年、禁煙5年以上とも2程度で同等だった。
解析の結果、過去の喫煙も現在の喫煙もメタボリックシンドロームの独立した危険因子であることが分かった。また、禁煙することでメタボリックシンドロームのリスクは減少したが、5年以上の禁煙期間を経ても、非喫煙群に比べると、メタボリックシンドロームのリスクは依然として高いままだった。
メタボリックシンドロームは、高血圧症や糖尿病など生活習慣病の重積した状態をいう。過去の喫煙も現在の喫煙もメタボリックシンドロームの独立した危険因子であることは、医療の現場での禁煙指導がいかに重要であるかを再認識させるものとなった。(三和護、医療局編集委員)
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