危険因子

受動喫煙はCOPDの危険因子
受動喫煙期間が長いとCOPDリスク上昇

大西 淳子=医学ジャーナリスト

家庭と職場における受動喫煙期間が長いと、慢性閉塞性肺疾患(COPD)リスクが有意に上昇することが示された。英国Birmingham大学のP Yin氏らが、中国の50歳以上の非喫煙者1万5000人以上を対象に調査して明らかになったもので、詳細はLancet誌2007年9月1日号に報告された。

COPDは、2020年までに世界の死因の第3位になると予想されている。喫煙が危険因子であることはよく知られているが、15%を超えるCOPD患者には喫煙歴がなく、他の危険因子の存在が示唆されている。一方、中国は他国に比べてCOPDによる死亡者数が多い上、喫煙歴のないCOPD患者の割合が高いことも報告されていた。

中国の受動喫煙レベルが高いことに注目した著者らは、受動喫煙がCOPDの危険因子かどうかを調べるために、広州Biobankコホート研究の登録者から、喫煙歴のない50歳以上の男女を抽出し、COPDと呼吸器症状に及ぼす受動喫煙の影響を分析した。

広州Biobankコホート研究は、重症の慢性疾患に対する環境要因と遺伝的背景の影響を調べるために、中国南部の住民を対象に行われているもの。登録者のうち喫煙歴がなかったのは1万5379人(男性1777人、女性1万3602人)だった。

家庭と職場での受動喫煙のレベルは自己申告で評価した。家庭内または職場の室内に喫煙者が何人いたか(0人、1人、2人以上)と、受動喫煙の期間(40時間/週で2年未満は低レベル、40時間/週が2〜5年で中レベル、40時間/週が5年超を高レベルとした)を尋ねた。

COPDの診断は、呼吸機能検査の結果(FEV1、FVC、FEV1/FVC)を基に、「COPD国際ガイドラインGOLD」を指標とした。呼吸器症状(咳または痰、息切れ、いずれかの症状)はMedical Research Council (MRC)呼吸器質問票を用いて調べた。

調査の結果、男女合わせて13.7%が職場で、14.5%が家庭で、高レベルの受動喫煙を経験していた。室内の喫煙者の数とCOPDリスクの間には有意な関係は見られなかったが、受動喫煙期間はCOPDリスク上昇と有意に関係していた。

低レベル群と比較した場合、家庭における高レベル群の調整オッズ比は1.60(95%信頼区間1.23-2.10)、職場における高レベル群では1.50(1.14-1.97)、家庭、職場を合わせた受動喫煙が高レベルとなったグループでは調整オッズ比は1.48(95%信頼区間1.18-1.85)だった。

呼吸器症状と受動喫煙の間にも有意な関係が見られた。家庭での受動喫煙を小児期、成人後に分けると、小児期の受動喫煙はいずれかの呼吸器症状のリスクを有意に高めていた(低レベル群に比べ高レベル群のオッズ比は1.16、1.05-1.29)。低レベル群と高レベル群を比較すると、咳のオッズ比は1.15(1.05-1.30)、息切れは1.19(1.10-1.29)、いずれかの症状は1.16(1.07-1.25)となった。

著者らは、受動喫煙とCOPDリスクとの間に因果関係があり、受動喫煙の状態が今後も続くとすれば、現在、中国に居住する50歳超の2億4000万人のうち、受動喫煙によるCOPDで死亡する非喫煙者は190万人に上ると推計している。現在のところ中国では、室内の喫煙はほとんど規制されていない。職場での喫煙を禁止し、禁煙指導を行うなどの対策が早急に必要だろう。

原題は「Passive smoking exposure and risk of COPD among adults in China: the Guangzhou Biobank Cohort Study」、


2007.9.14 記事提供 日経メディカル