脳卒中など 危険性低下添加食品豊富に
葉酸が強化された「しんたまご」。やや割高だが、健康を気遣う人などが購入していく(東京都杉並区のサミット西永福店で)=板東玲子撮影 ビタミンB群の一種「葉酸」を多く含んだ卵やパンなどの食品が増えてきた。
葉酸は胎児の発育を促すだけでなく、脳卒中や認知症のリスク軽減にも有効という報告があり、注目されている。葉酸をPRし、市民の健康づくりに役立てようと試みる自治体も登場している。
鶏卵を扱う業界最大手の「JA全農たまご」(東京)は、自社ブランド「しんたまご」を改良し、葉酸含有量を約2倍に増やして9月から発売を始めた。10個入りが300-400円で全国のスーパーなどで販売されている。
一般の卵の場合、100グラムあたりの葉酸量は43マイクロ・グラム(1マイクロ・グラムは100万分の1グラム)。それに対し、「しんたまご」は80マイクロ・グラム含まれている。鶏のエサに葉酸を添加することで開発に成功したという。
「加熱しても葉酸の量が減らないし、体内での吸収もいい。健康に貢献できる商品を作りたかった」と同社。
首都圏を中心に約90店ある「ナチュラルローソン」では、「葉酸玉子の厚焼玉子おにぎり」(158円)をはじめ、葉酸入りのクッキーやあめなどを扱う。
葉酸は、ブロッコリーやホウレンソウなどに多く含まれるビタミンの一種。胎児の正常な発育に欠かせないと言われており、厚生労働省では妊娠を希望する女性に対し、1日400マイクロ・グラムの摂取を推奨している。
しかし、認知度は今ひとつで、若い女性の摂取量は1日250マイクロ・グラム前後といわれている。葉酸の不足から、先天性の病気を持つ赤ちゃんが生まれる懸念もある。そのため医師らを中心に「葉酸と母子の健康を考える会」(京都市)が昨年発足。葉酸のPR活動に取り組んでいる。
さらに最近では、脳卒中や認知症などのリスク軽減にも期待できることが、各国の研究からわかってきた。アメリカでは、成人の1日の摂取推奨量を日本の約2倍の400マイクロ・グラムに設定。1998年からは、小麦などの穀物に葉酸の添加を義務づけるなど、国策として葉酸摂取を推進している。食物への葉酸の添加は、カナダなど世界50か国以上で実施されているという。
「アメリカでは葉酸の添加を義務化して以降、脳卒中の発症が減っている。毎日、摂取することで認知症や脳卒中の予防に効果が期待できる」と女子栄養大副学長で医師の香川靖雄さんは話す。
健康づくりを目的に埼玉県坂戸市では、アメリカ並みの葉酸摂取を市民に促す「坂戸市葉酸プロジェクト」を2006年にスタート。啓発活動に力を入れている。
葉酸を含む食品の開発支援も行う。首都圏に約30店舗を展開するパン店「サンメリー」と地元のパン店4店は、坂戸市の働きかけに応じ、「葉酸ブレッド」を発売、人気商品となっている。同市内では、葉酸入りのレトルトカレーや手打ちうどん、ドレッシングなども登場している。
「自然の食品から必要量の葉酸を摂取できるのが理想だが、実際には難しい。葉酸を添加した食品を上手に生活に取り入れて無理なく摂取してほしい」と坂戸市健康づくり政策室では話している。
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