脳梗塞:仕組み解明 たんぱく質2種、炎症悪化作用
脳梗塞(こうそく)の発症後に起きる脳の炎症で、神経細胞が死にいたる詳しいメカニズムを、慶応大の吉村昭彦教授(免疫学)らが明らかにした。後遺症を減らしたり、治療が遅れても効果がある治療方法の開発が期待できるという。3日の医学誌ネイチャー・メディシン(電子版)で発表した。
脳梗塞は脳の血管が詰まり、脳組織が損傷する病気。損傷を受けた後、その周囲が数日間炎症を起こして神経細胞が死滅し、体のまひや言語障害などをもたらす。炎症のメカニズムが不明で、発症後1日が過ぎると有効な治療法がなかった。
研究チームは炎症にかかわるたんぱく質として最近発見されたインターロイキン(IL)17とIL23が関係していると仮定。脳梗塞を再現したマウスの脳でILの発現を調べた。
発症1日目には、梗塞部分に死んだ細胞を捕食する免疫細胞「マクロファージ」が集まり、IL23を作っていた。続いて別の免疫細胞「γδ(ガンマ・デルタ)型T細胞」が集まって、IL17を分泌。そのピークは発症3日目だった。このT細胞はIL23の刺激でIL17の分泌を始める性質があり、2種類のILが連鎖的に作られ、時間差で炎症を悪化させる仕組みが分かった。
二つのILが分泌されない遺伝子欠損マウスを作ると、通常と比べて梗塞部分の体積が約4割小さくなった。T細胞が梗塞部分に集まることを防ぐ薬剤を使ってもほぼ同じ効果があった。同様のメカニズムが人間にある可能性は高いという。【奥野敦史】
|