登山者が非常食代わりにしたり、受験の休み時間にエネルギーを補給したり。健康にいいという定評のあるチョコレートだが、改めて効能や食べ方を探ってみた。
チョコレートが健康に良い、と言われる最大の理由は、原料のカカオマスに、ポリフェノールの一種、カカオマスポリフェノールが含まれているからだ。
ポリフェノールには、動脈硬化やがんなどを引き起こす有害な活性酸素の働きを抑え、血液中の悪玉コレステロールの酸化を防ぐ抗酸化作用がある。野菜や赤ワイン、緑茶などにも含まれているが、チョコレートが他の食品より優れているのは含有量と吸収率だ。
チョコレートにはこんな効用も
●ガンの発生や進行を抑える
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●胃かいようの発生や悪化を防止する |
●ストレスを予防し、回復を助ける |
●更年期の「不定愁訴」(原因不明のイライラや不快感)を緩和する |
●アレルギー疾患や炎症を抑制する |
●免疫力のバランスを整える |
●O-157やピロリ菌を殺菌する |
●外傷を治癒する細胞などの働きを促す
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(チョコレート・ココア国際栄養シンポジウムでの研究発表から)
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100ミリリットルの赤ワインに含まれるポリフェノールは0.3グラム、緑茶は0.1グラムだが、100グラムのチョコレートでは0.8グラムある。さらに、寺尾純二・徳島大学教授(食品工学)らの実験によると、約100グラムのチョコを食べた成人男性の場合、カカオマスポリフェノールの一種、エピカテキンの約30%が体内に吸収され、血漿(しょう)に抗酸化作用が確認されたという。
寺尾教授は「個人差はあるが、野菜や赤ワイン、お茶ではおそらく10%も吸収されないだろう」と話す。ポリフェノールの摂取・吸収・代謝の過程にはまだ不明な点も多いが、効果的に摂取するなら、チョコレートが有利と言えそうだ。
チョコレートはカカオ豆の油を原料とするカカオバターを大量に含むから、食べると肥満につながるイメージが強い。だが、茨城キリスト教大学の板倉弘重教授(消火器内科学)は「カカオバターの主成分のステアリン酸は、体内への吸収率が低く、低カロリーなので太りにくい」と言う。
さらにこのステアリン酸、コレステロール値を上げる機能を持つ飽和脂肪酸の一種であるにもかかわらず、実際は「コレステロール値を下げ、高脂血症などを防ぐ働きがある」と板倉教授は指摘する。
チョコレートを食べると虫歯になる、という印象もあるが、「他の菓子と比べて虫歯になりにくい」という研究結果が報告されている。チョコに含まれるカカオ成分が、ソブリナス菌という口内細菌による虫歯の発生を抑えるというのだ。もちろんチョコが虫歯を防ぐわけではないし、砂糖が虫歯の発生源であることに変わりはないが。
いいことずくめのチョコレートだが、気を付けることがある。まず、ポリフェノールの効果を期待するなら、ブラックチョコを食べること。「ホワイトチョコにはカカオマスを全く使っていない商品もある」(寺尾教授)からだ。板倉教授も「砂糖や油などの混ぜ物が少なく、カカオ豆をたっぷり使った高級チョコのほうが効果がある」と話す。
偏った食べ方も避けたい。カカオバター自体は低カロリーでも、砂糖や油が加わったチョコの食べ過ぎは、カロリーの過剰摂取になる。日本チョコレート・ココア協会の梶睦・広報委員長は「ほかのポリフェノールに関する実験結果からみて、1日に板チョコの半分、50グラム程度が適量では」と話している。
また、板倉教授は「様々な食品が様々なポリフェノールを含んでおり、チョコレートだけで補うのは間違い」と強調する。種類の異なるポリフェノールを含んだ緑黄色野菜やたんぱく食品と組み合わせ、普通の食生活の中でバランス良く取ることが大事という。
おやつや食後のデザートに、コーヒーやお茶と一緒に軽くつまむのが、理想的な食べ方と言えそうだ。
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