脚のむくみ こう解消

足首の運動やマッサージ
血管収縮、下肢に水分ためず

 1日中、座り仕事や立ち仕事を続けていると、夕方、ブーツや靴がきつくなる――。脚のむくみに悩む人は多い。健康な人の一過性のむくみなら、実は足首を動かしたり、ちょっとしたマッサージをしたり、日常の何気ない工夫で抑えることができる。

 「オフィスで1日中、座りっぱなしで事務作業をしていると、退社時間になると、脚がむくんでいる」(24歳OL)という人がいる一方で、「朝から晩まで外回りしていると、夕方近くから脚がむくんでだるくなる」(34歳の営業職の女性)という人も。同じ姿勢を続けていても、歩き続けていても、むくみは起きるようだ。

 動脈からしみ出した水分は組織内を巡って栄養素を供給した後、今度は老廃物とともに静脈やリンパ管に回収されることで、体内で循環している。ところが、回収されるはずの水分が、なんらかの原因で血管の周りの細胞にたまってしまうために起きるのが、むくみだ。
 脚のむくみには、一過性のものと、病気が原因のものとが考えられる。一過性の場合、重力の影響で、夕方になると、どうしても血液が下肢にたまりやすくなるためで、一晩寝れば、朝には治っている。
 東京医科大学の重松宏教授は「人類が二足歩行を始めて以来、脚のむくみ自体は誰でも起きる。女性の方が気付きやすいが、実は男性もむくみは起きる。いずれにしろ、一晩で治るようなら一過性の場合はあまり心配しなくて良い」。

 ただ、一晩寝ても治らなかったり、毎日のように「むくんでは治り」を繰り返しているようなら、病気を疑ってみる必要がある。例えば心臓疾患により、血液のポンプ機能が弱ってしまっていることが考えられる。下肢の表面がでこぼこしているなら、静脈瘤(りゅう)のシグナル。その他、肝臓や腎臓疾患のほかガンで手術の際、リンパ節などを切除した人の場合、リンパ浮腫の可能性もある。気になるようならまず一度、内科を受診してみるとよい。

 一方、一過性のむくみなら、「日常生活をちょっと見直すだけで、むくみにくい脚になれる」というのは、後藤学園付属リンパ浮腫研究所の佐藤佳代子所長。例えば、日中、座った状態で、かかとを上げ下げして、つま先を伸ばしたり、足首を回してみる。ヒザを伸ばして、つま先を体の方にもってくるようにし、ふくらはぎを伸ばす――。たったそれだけの運動でも効果があるという。
 足首を動かすとふくらはぎが動く。ふくらはぎを動かすには太ももの筋肉を使うことになるといった具合に、「脚の筋肉を動かすことで、脚全体の筋肉の持つポンプ作用を働かせることになる」(佐藤所長)からだ。筋肉を動かすことで血管の収縮を促し、リンパ管の動きを活発にしてやれば、下肢に水分がたまらなくなる。同様に、朝、起きる前に、「ふとんの中で、伸びをする要領で足の甲を伸ばすだけでも違ってくる」と佐藤所長。

 マッサージの場合、太ももを包み込むように両手を密着させる。脚の付け根へとなでるような感覚で、移動させていく。次にふくらはぎの辺りから脚の付け根へ、さらに足先から脚の付け根へといった具合に徐々にスタートさせる手元の位置を下げていく。
 脚にたまった水分を脚の付け根に移すイメージで、手を動かすのがポイントだ。佐藤所長は「風呂の中で足を洗うときの手順にしたり、風呂上りに脚にクリームを塗るときの手順にすれば、習慣化し、無理なく毎日、続けられる」と長続きのコツをアドバイスする。
 また、この時期、むくんだ状態というのは「ひざから下がタンクになったようなもの。水分がたまり冷えやすくなる。冷えると血行も悪くなるという悪循環になる」(佐藤所長)。ひざ下までの靴下やひざ掛けをするなど、下半身を冷やさないように心掛けよう。

一過性のむくみの予防・改善策
マッサージ
T @太ももの前面を両手で包み込むように当て、脚の付け根に向かって、程度により5−10回、なでるように動かす。
A次に側面に手を当てて@と同様に脚の付け根に向かって動かす

U Bさらに裏側に手を当て、脚の付け根に向かって動かす
太ももが終わったら、次はヒザの辺りから脚の付け根に向かって、Tと同じ要領で、前面、両側、裏側の順にマッサージする

V さらにふくらはぎ、足先とスタート地点を下げていき、足先まで来たら、来た順を戻るように再度マッサージする

体操
足首を左右にゆっくり回す
背筋を伸ばしてイスに浅く座る。両足のかかとを一緒に上げ下げする
ヒザを伸ばした状態で、つま先を体の方へ倒すようにして、ふくらはぎを伸ばす
ヒザを伸ばした状態でつま先を伸ばす
(後藤学園の佐藤さんの話を基に作成)


2008.2.2 記事提供  日経新聞