ストレスも大敵
気になる中高年
過度の酒・たばこ/運動・睡眠不足
体のにおいは健康状態を示すバロメーターになる。中高年をすぎると「加齢臭」が気になる人も多いが、何も年齢だけが原因ではない。連日の記録的な猛暑もおさまりつつあり、汗をかきにくくはなったが、油断は禁物だ。
古本やロウソク、ポマードのにおいに例えられることが多い加齢臭。においのもとになるのが、ノネナールと呼ぶ物質だ。皮膚にある皮脂腺(ひしせん)のなかで脂肪酸の一種である9−ヘキサデセン酸が増え、過酸化脂質と反応して分解されるとできる。
40歳以上に特有
資生堂の調査で、40歳以上に特有の体臭成分であることが分かった。「オヤジ臭」と呼ばれることもあるが、実は女性の体からもノネナールは見つかる。「加齢臭は必ずしも男性だけから出るにおいではない」(資生堂ライフサイエンス研究センター生理科学研究所の土師信一郎主幹研究員)。
ノネナールは一般的に年とともに量が増える傾向にあるが、個人差が大きい。体臭に詳しい五味クリニック(東京・新宿)の五味常明院長は「加齢臭は生活習慣病とも深くかかわっている」と話す。「少しぐらいにおっても構わない」とあなどってばかりはいられない。
「食事は肉類が中心で毎晩のように酒を飲む」「ひっきりなしにたばこを吸う」「睡眠や運動が不足してストレスがたまる」――。こうした生活を続けると、血中のコレステロールが増加するのと同じように、皮脂腺のなかでも脂肪分がたまっていく。分解される脂肪分が多くなると、その分、ノネナールの量も増える。
また、ストレスなどで体内の活性酸素が大量に発生する。過酸化脂質が増え、やはりノネナール増につながる。
加齢臭対策の第一歩が普段の生活を見直すこと。具体的には、9−ヘキサデセン酸のもとといわれる肉類やマヨネーズなど脂質の摂取をなるべく控える。野菜や果物をたくさん食べる。とくに活性酸素を減らしてくれるビタミンCやビタミンEを積極的にとるよう心がけたい。
活性酸素によって傷ついた細胞を修復してくれる「抗酸化物質」もよい。緑茶に含まれるカテキンや大豆に多いイソフラボンなどが代表例。また、酒やたばこを減らし、睡眠をしっかり取る。日常生活で加齢臭を防ぐよう気をつければ、様々な生活習慣病予防にもなる。
ミョウバンで消臭
体臭がどうしても気になる場合は、必要に応じてにおいを消す方法を工夫する。ノネナートは水に溶けるため、汗をかいていなくてもきちんと衣服を洗濯する。ぬれたハンカチなどでこまめに体をふくようにすると効果的だ。
五味院長が進めるのがミョウバン。薬局などで簡単に手に入るミョウバンの粉末を水に溶かし、スーツやシャツなどにスプレーするだけで消臭効果が期待できるという。
ただ、体臭を気にしすぎると逆効果になることもある。においに悩むあまり、それをストレスに感じてしまうと、活性酸素の増加を招き、加齢臭が増えるという悪循環に陥りかねない。
最近、「体臭恐怖症」や「自己臭恐怖症」の人も増えている。
においの原因や性質をはっきりと認識しないまま「自分の体は嫌なにおいを放っているのではないか」と考えるのは一種の心の病。他人の視線を気にしすぎて対人関係に支障が出てしまうこともある。独りで悩まずに家族らに打ち明けると杞憂(きゆう)に終わることもある。
土師主幹研究員は「日常生活のなかでにおいが消えてしまったため、体臭を意識するようになった」と解説する。例えばトイレ。戦後間もないころはくみ取り式が当たり前だったが、今では、水洗トイレでも消臭機能がなければ古いと敬遠されるようになった。五味院長も「日本人の過度の清潔志向は考えもの」と話している。
(生川暁)
加齢臭対策はまずできることから
▲食生活の改善
肉類など脂肪分の摂取を減らす
野菜や果物をたくさん食べる
緑茶に含まれるカテキンなど、抗酸化物質も有効
▲生活習慣の見直し
酒やたばこを減らす
睡眠時間をきちんと確保する
ストレスをできるだけためない
▲必要に応じてにおいを消す
衣服を毎日きちんと着替え、洗濯する
ぬれたハンカチなどでこまめに体をふく
ひとくちガイド
《本》
◆体のにおいで悩む人は
「体臭恐怖」(五味恒明著、ハート出版)
《ホームページ》
◆抗酸化物質について詳しく知りたい人は
日本抗酸化学会(http://www.jsa-site.com/index.html)。