血栓溶解剤 組織再生効果、
マウス実験で成功 「細胞移植より安全」
東大チーム
血液のめぐりが悪い虚血状態になって壊死(えし)しそうな組織を、脳梗塞(こうそく)の治療で使われる血栓溶解剤「t-PA」の投与により再生させ、機能も回復させることに、東京大などの研究チームがマウス実験で成功した。チームは「細胞移植によらない再生医療の可能性を示す成果だ」と話す。米国血液学会誌「ブラッド」で発表した。
t-PAは、血栓を溶かして血流を再開させる薬剤として使われる。東大医科学研究所の服部浩一・特任准教授(幹細胞制御学)らは、マウスの後ろ脚の付け根にある動脈と静脈を縛り、ふくらはぎの筋肉を虚血状態にした後、t-PAを3日間投与する群と、しない群とを比較した。15日後、ふくらはぎの組織中の新しい血管の本数は、投与する群がしない群の約1・5倍に増え、血流も戻って、運動機能も健康なマウスと見分けが付かないほどに回復した。
血液中の成分を調べると、投与しない群と比べ、2日目に白血球数が1・5〜2倍、1週間後には、血管を新しく作り出す作用を持つたんぱく質「VEGF」も約2倍に増えていた。t-PAは、白血球が血管や組織内に入り込むのを助ける働きがある。チームは、t-PA投与によって組織中で増えた白血球がVEGFを増やし、血流を回復させると分析している。
服部特任准教授は「臨床現場で使われている薬剤なので、細胞移植による再生医療に比べて安全性や倫理面のハードルが低い。再生医療の新たな手段となる可能性が高い」と話す。
【須田桃子】 |