メークが進化、スプレーに
触れずに可能、医療も注目
広がるかエアブラシ
模型などの塗装に使われるスプレーの一種、エアブラシがメークの世界でも注目され始めた。肌に手を触れずに化粧品をむらなく塗れるという特徴から、ファッションにとどまらず、傷あとのカバーなど医療分野へも関心が広がっている。
東京ビッグサイト(江東区)で今年5月に開催された美容の総合見本市。大阪のエアブラシメーカー「エアテックス」が主催したメーク講座には80人以上が集まった。化粧水と乳液から始まってファンデーション、チーク、肌に描いた花の模様まで、ほぼエアブラシだけで完成。参加者から驚きの声が上がった。
エアブラシは圧縮した空気の力で塗料を霧状に噴射する。同社によると、もともと写真修整用器具として開発されたが、きれいなグラデーションを描けるため絵画や模型の塗装によく使われる。
見本市で講師を務めたヘアメークの出居沙苗(いでい・さなえ)さん(35)によると、これを化粧に使ったのは米国が最初。ハリウッド映画の特殊メークに利用されていたが、1990年代に一般のメークに転用されたという。
日本で注目されたのはここ数年。背景にはテレビ、映画などのデジタル高画質化がある。「エアブラシは液状のファンデーションを薄く均一に吹き付けることができるため、高画質でもむらが見えにくい」(出居さん)という理屈だ。
ショーの現場では、モデルの脚に暗い色を吹き付けて細く見せたり、腹筋が割れているように筋を入れたり、といった使い方もされるという。
ブライダル関係者も期待を寄せる。広い範囲に素早く吹き付けられるうえ化粧崩れもしにくいため、背中が大きく開いたウエディングドレスにも向くし、肌に直接レースやアクセサリーのような模様を描くことで"変身"もできる。
実際に体験した女性は「肌に触られないから、他人に化粧してもらうことに慣れていなくても緊張せずに済む」と語る。
触らないという特徴は、やけどや傷のあとを目立たなくするための医療メークの分野でも注目される。医療メーク指導者の育成に取り組む「日本パラメディカル協会」常任理事の牧野(まきの)エミさん(52)は「肌への負担が少なく、専門の化粧品を使えば入浴しても落ちない。
数回の講習で、患者さんが自分でメークできるようになる」と話す。
ただ、空気を圧縮するコンプレッサーは小さいものでも1キロ近くあり、持ち運びが不便だという課題も。メーク法を指導できる人材もまだ少なく、一般ユーザーに広がるには時間がかかりそうだ。
|