米国では、脂質降下作用を期待する何百万人もの患者が紅麹米由来のサプリメントを使用している。米Pennsylvania大学のRam Y. Gordon氏らがそれらサプリメントの活性成分であるモナコリンの含有量を12製品について調べたところ、製品ごとに大きな差があった。また、3分の1の製品に腎毒性が懸念されるカビ毒シトリニンが含まれていた。論文は、Arch Intern Med誌2010年10月25日号に掲載された。
脂質降下薬としてスタチンは広く投与されているが、代替治療を求める患者も少なからず存在する。紅麹米由来サプリメントの活性成分はモナコリンで、サプリメントは14種類のモナコリンを含んでいる。モナコリンは肝臓でのコレステロール合成の律速酵素であるヒドロキシメチルグルタリルCoA(HMG-CoA)還元酵素を阻害する作用を持つ。
遠藤章氏が発見したロバスタチンの実体は紅麹カビから分離されたモナコリンKだ。紅麹米サプリメントもモナコリンKを含むことから、米食品医薬品局(FDA)はこの10年間、サプリメント製造会社に対して、薬効をうたうことをやめ、モナコリンK含有量の多い製品は市販しないよう警告してきた。しかし状況は変化せず、今も薬局で処方箋なしに紅麹米サプリメントを購入することが可能だ。
複数の研究が、特定の処方の紅麹米サプリメントは、偽薬に比べLDL-コレステロール値を有意に低下させると報告している。こうした研究結果が一般市民とメディアの関心を呼び、医療従事者も患者に対して紅麹米サプリメントの使用を勧めるようになった。しかし、含まれているモナコリンの量は製品ごとに異なり、ラベルに含有量の記載はないため、一部のサプリメントが示した脂質降下作用と安全性をすべての製品に期待できるかどうかは不明だ。
著者らは、市販されている紅麹米サプリメント12製品のモナコリン(モナコリンの総量とモナコリンK、モナコリンK水酸化物の量)の含有量を調べ、紅麹菌由来のカビ毒シトリニン(動物に対する腎毒性や遺伝毒性が確認されている)の含有の有無を調べることにした。分析は06年8月から08年6月に実施した。HPLCで各成分に分離し、それぞれについて質量分析を行った。
12製品における各成分の含有量のばらつきは大きく、差は顕著だった。モナコリンの総量は0.31〜11.15mg/カプセル(平均は4.17mg)、モナコリンK(ロバスタチン)の量は0.10〜10.09mg/カプセル(平均は2.54mg)、モナコリンK水酸化物の量は0.00〜2.30mg/カプセル(平均は0.95mg)だった。
4製品からシトリニンが検出された(含有量は24〜189ppm)。
各製品に記載されている1日推奨用量を使用すると、モナコリンをどれだけ摂取することになるかを計算した。モナコリンKの平均摂取量は6.0mg/日となり、最も含有量の高い製品を使用した場合には14.5mg/日になった。また、モナコリンKとモナコリンK水酸化物を合わせると、平均摂取量は9.0mg/日で最高は19.4mg/日となった。
モナコリンKとその水酸化物以外のモナコリンの含有量はどの製品においても非常に低く、1mg/カプセルを超えなかった。
紅麹米サプリメントは、スタチン不忍容の患者などに対し、代替薬として利用できる可能性はあるが、そのためには市販品の規格化と正確な表示が欠かせない。著者らは、「現状では医師は、高脂血症の治療や心血管イベントの一次予防または二次予防を目的として紅麹米サプリメントの使用を患者に勧めることに、慎重でなければならない」と述べている。日本国内でもモナコリンKを含む紅麹米由来または紅麹由来のサプリメントが多数市販されており、製品の状況は米国と同様と考えられる。
原題は「Marked Variability of Monacolin Levels in Commercial Red Yeast Rice Products: Buyer Beware!」、概要は、Arch Intern Med誌のWebサイトで閲覧できる。